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ジアスワークス、デジタルグッズライター

山下達也

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 ある日、私たちの生活のなかに颯爽と現れ、忽然と姿を消してしまったMD。そのブームは5~6年という短い期間だったといいますが、青春時代の思い出とともに今もなお鮮烈な印象が残っています。そこで、デジタルグッズライターの山下達也さんによる解説のもと、MDについて振り返ってみました。

1992年に誕生。そもそもMDとは何だったのか?

 1992年、ソニーがMDを発表。すでにカセットテープやCDが普及しているなか、MDがユーザーの心をつかんだ要因は何だったのでしょうか。

*コンパクトディスクよりもコンパクト*

「CDは直径120mm、厚さ1.2mmと鞄の中に入れておくにはちょっと大きめのサイズ。一方、MDは『ミニディスク』の名前のとおり、横72mm×縦68mm×厚さ5mmというコンパクトサイズで持ち運びに最適でした」(山下さん)

*カセットテープとCDの利点を兼ね揃えた機能性*

「当時、中高生の間では録音・編集ができるカセットテープ派とCDプレーヤーでそのまま聴くCD派で人気を二分していました。そんななか、両方の利点を兼ね備え、さらに音質も向上したMDは衝撃的だったんです」(同)

*録音した後に曲順の入れ替えができる!*

「好きな曲だけ選んで録音したりと自分好みの1枚を作ることができ、数曲のためにわざわざCDを持たずにすむように。それまで音楽の録音と編集はカセットテープの役割でしたが、最大の違いは録音した後に曲順の入れ替えなどの編集が可能という点。失敗したらすべて消去しやり直す必要があったテープに比べ、この便利さは画期的でした」(同)

 それまでの一発勝負のスリルからの解放。目新しいギミックの数々にみなが夢中になりました。また、5~7万円台と発売当初はちょっと高めの価格設定だったプレーヤーも、2000年頃には3~4万円台のものが展開されたことで、さらにユーザーが拡大。学生の間では一人一台が珍しくないほど、MDは一大ブームに!

iPodの台頭にともない衰退。2013年をもって生産を終了

 MD全盛の2000年、ひっそりとiPodが登場します。当初はMacのみの対応だったiPodに注目する人はあまりいませんでしたが、MDは次第にその存在を脅かされることに。

「MDブームは5~6年で去りました。2000年頃から流行りはじめ、ピークは2004年頃までです。2003年にiPodがWindows対応してから徐々に人気を奪われていきましたが、パソコンを持たない人はMDを支持。この頃はまだMDユーザーはたくさんいました。本格的に下火になったのはパソコンが普及してきた2005年頃。iPodの価格も下がったこともあり、完全にユーザーが移行してしまったんです」(同)

 iPodという強力なライバルに押され人気が下降線を辿ったMD。しかし、その状況下で必死にもがいた痕跡も…。

*パソコン対応のMDでiPodに対抗*

「iPodに対抗し、パソコンから音楽を取り込める『NetMD』という製品も発売されたんですが……曲数があまり入らず、全く普及せず。しかもパソコンがないという理由で支持していたMDユーザーにはむしろ逆効果だったようで、結果は大失敗でした(苦笑)」(同)

 時代に合わせた改良の努力も裏目に出てしまう…。MDにそこはかとない哀愁を感じてしまうのはそんなところも根っこにあるのかもしれません。そうして、本家・ソニーが2013年3月にMDプレーヤーの生産を終了。続くようにオンキョーも同年7月に撤退。

「実はMDって世界ではあまり流行らなかったんです。なので日本で終了したということは事実上、世界で終了ということと一緒ともいえるんです」(同)

お気に入りの音楽を聞いたり、それを録音して好きな人にプレゼントしたり、青春時代の様々なシーンで活躍してくれたMD。なんだか寂しい気持ちにもなってしまいます。使わなくなった今も大事に保管している…そんな人はたまに引っ張り出して聴いてみてくださいね。

(志賀むつみ)
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ライター

志賀むつみ

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