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2012.08.13
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2012.08.13
突然ですが「パーソナルスペース」という言葉をご存じでしょうか? 簡単に言うと「コミュニケーションをとる相手との物理的な距離」のことです。例えば、カフェの席や電車のシートに座るとき、なるべく人と距離を置いて座ったりしますよね。一般的には相手との関係性によって、その距離が変わると言われています。
このパーソナルスペースに関して昔から様々な研究がされていますが、最も有名なのが、1966年にアメリカの文化人類学者エドワード・ホールが提唱したプロクセミックス(近接学)理論というもの。彼によると相手との距離感は以下の4つに分けられるそうです。
家族、恋人など、ごく親しい人がこの距離にいることは許されるが、それ以外の人がこの距離に近づくと不快感を伴う
二人が共に手を伸ばせば相手に届く距離で、友人同士の個人的な会話ではこの程度の距離がとられる
身体に触れることは出来ない距離、改まった場や業務上で上司と接するときにとられる距離のこと
講演会や公式な場での対面のときにとられる距離
人は無意識のうちにこうした心の縄張りを使い分けて、周囲とのコミュニケーションを図っているそう。さらに日本人は、「ハグが習慣の欧米に比べて日本人はシャイな人が多い」、「日本人は内向的な人種だから」などの理由から諸外国人に比べてパーソナルスペースが広いと考えられています。
しかし、この一般的な説は日本人の性質やイメージから推測されたもので、信憑性はナゾ…。視点を変えてみれば、国土の狭い日本では人口密度も高いし、満員電車で密着することも多いことから、逆に「パーソナルスペースが狭い」とも考えられそう。
気になって調べてみたところ、そんな考察を裏付ける日本で行われたパーソナルスペースの研究結果を発見したのです!
「私どもが行った実験ではエドワード・ホール同様に4つの分類のもと、実際に住民の家まで出向き、スケールを使って『他人とどのぐらいの距離が欲しいか? 』というアンケートを実施しました。この実験では男女差、年代差、職業差、年収差など、様々な分類を用いて日本人のパーソナルスペースの特徴を調べたのです。その結果、先のエドワード・ホールの研究とは異なる、興味深い数値が出たんです」とは、日本人のパーソナルスペースについて約7年間にわたり男女約900名を対象に実験を行った、パフォーマンス学の権威、国際パフォーマンス研究所代表・佐藤綾子先生。佐藤先生が導きだした数値は以下のとおり。
密接距離 男性60cm、女性58cm(プロクセミックス理論:0cm~45cm)
私的距離 男性72cm、女性69cm(同上:45cm~120cm)
社会距離 男性89cm、女性107cm(同上:120cm~350cm)
公共距離 男性108cm、女性118cm(同上:350cm以上)
「この調査でわかったことは、日本人の公共距離は外国人の3分の1しかないということ。つまり、日本人は無意識に外国人が不快に思うところまで、近づいてしまうということです」(佐藤先生)
確かに、列に並ぶときなどを見ると、日本人は前後の人と密着していますよね。佐藤先生の説によれば、それを外国人は不快に感じているということなんですね。では、なぜこのような違いが出たのでしょうか? 佐藤先生によると、要因は大きく3つに分けられるそうです。
「日本と外国を比べて、大きな違いが武器の所持です。日本では武器を所持している人は皆無に等しいです。しかし、外国ではそうはいかないため、他人に対する警戒心が距離を遠ざけているのです」(同)
「住んでいる場所の物理的な大きさが関係しています。日本よりも外国の方が家も土地も広いので、このような差が出ます。こういった空間的な広さや大きさの感覚の違いがパーソナルスペースに表れていると言えます」(同)
「これも警戒心の違いに通じるのですが、アメリカは多人種の国です。様々な人種が周りにいることから、無意識に用心する傾向があります」(同)
さらに、「個人主義と集団主義の違いも関わってきます」と佐藤先生。常に団体行動をするように教育されてきたり、昔は多くの家庭が狭い部屋で一緒に寝ていたような日本人ですから、確かにパーソナルスペースが狭いのも頷けます! とはいえ日本人同士でも、性別や年齢などでパーソナルスペースは違いがあるかもしれませんのでご注意を……。
(坂井あやの/verb)
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