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2019.06.06
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ひと口に都市伝説といってもいろんなものがありますが、皆さんは「小さいおじさん」という話をご存じでしょうか。身長15cmほどのおじさんの目撃談で、ある神社に行くと小さいおじさんがついてくる、風呂場で小さいおじさんを見た、窓に張り付いてこちらを見ていた、といったバリエーションがあります。今回はこの不思議な話について、日本最強のデバンカーといわれる皆神龍太郎先生に聞いてみました。
※「デバンカー(debunker)」とは、超常現象やオカルトを懐疑的に扱い、科学的に検証しようとする人のことです。
――最近は「都市伝説」という言葉もずいぶん一般的になりました。
皆神先生 「urban legend(アーバン・レジェンド)」の訳語なんですがね。そもそも都市伝説という言葉と概念が有名になったのは、ジャン・ハロルド・ブルンヴァンというアメリカの民俗学者によります。彼の『消えるヒッチハイカー』(1981年)という本は、都市伝説についての古典的な著作です。もし興味があったら読んでみるといいですよ。
――2009年ぐらいに広まったとされる「小さいおじさん」という都市伝説についてなんですが。
皆神先生 小人の目撃談というのは世界中にあります。妖精の目撃談などもその一種といっていいかもしれません。また、小人に関する説話も世界中にあります。日本では「一寸法師」というおとぎ話が有名ですね。
――「小さいおじさん」を見た!という事件はあちこちで報告されているようですが、どう解釈すればよいのでしょうか? 何かを見間違えたかのでしょうか?
皆神先生 そうですね、面白がって話を広めているのでなければ、見間違えが一番多いと思うのですが、「見えた」と本当に本人が認知しているという可能性もあるでしょう。
「オーラ」についての回のときにもご説明しましたが、「何かが見えている」と本人が感じていることが本当でも、そこに実際に何かがあるとは限らない場合があるんですよ。人間の脳は、「実際にはないもの」を「見た」と認知してしまうことがありますからね。
⇒参照記事:「皆神先生に聞いた! 「オーラ」って一体なに?」
――なるほど。
皆神先生 例えば、「シャルル・ボネ症候群」という疾患があります。これは視力障害者に特有の幻視症状で、ものすごくリアルな幻を見ることで知られています。例えば玄関に靴が一面に並んでいる幻覚が見え、あまりにリアルなために本人が一足ずつ触って確かめてみないと、本物の靴が履けなかったとか。本人はそこにあると思うのですが、実際にはないので他の人には見えません。
霊能者として有名だった宜保愛子さんは4歳のときに左目に障害を負い、ほとんど見えなくなったといわれています。そのため宜保さんに見えたという霊視はシャルル・ボネ症候群による幻視だったのではないかという仮説を出した人もいます。このシャルル・ボネ症候群は特に脳の器質的障害が見られないのに起こるとされています。
――知りませんでした。
皆神先生 「リリパット幻視」という言葉もあります。小さな人や物、動物などが見える幻視のことで、『ガリバー旅行記』に登場する小人が住む島の名前「リリパット」からとられています。小さい象とか、そのようなものが見えるのです。脳機能障害によって幻視が起こることがありますし、精神疾患、またアルコール中毒・薬物中毒によっても起こり得ます。幻視というのはそれほど珍しい現象というわけでもないのです。
――「小さいおじさん」を見た人がみんな幻視というわけではないでしょうが……。
皆神先生 考えられるのは、
1.罪のない受けるネタと思っている人の作り話
2.何かの見間違い
3.その人にしか見えないものを見た(幻視)
のどれかでしょうね。特に「1」 は、「小さいおじさん」を見たという人に芸能人が多いという辺りがなんとなく気になります。しかしだからと言って「見た」という人を一方的に嘘つき呼ばわりするのもまた、いかがなものかと思います。
先に述べたように、人は割と簡単に錯覚や幻視を起こすものですし、小人に関する説話は世界中にあります。ブルンヴァンによれば「都市伝説」とは、民間説話の下位概念です。小さなおじさんという話も昔からある説話の語り直しと考えることができるかもしれません。まさに都市伝説にふさわしい題材であるように思えますね。
――ありがとうございました。
都市伝説「小さなおじさん」は、実際にそのようなおじさんがいない以上は「創作話」「見間違い」「幻視」のいずれかと考えるのが妥当なようです。実際にいたら面白いのですが……。
(高橋モータース@dcp)
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