ヒトメボ

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「オーラ」という言葉は、現在では日常会話でも使われるようになっています。例えば、「○○さんはオーラが違うよね」「特別なオーラがある」なんて言い方をしますね。一方で、オーラはオカルト方面で使われる言葉でもあります。「前世のオーラが見える」「○○さんのオーラが弱くなっている」などの言い方で、スピリチュアルな世界を表現したりします。今回は、後者の霊的な方のオーラについて日本最強のデバンカーといわれる皆神龍太郎先生にお話を伺いました。

※「デバンカー(debunker)」とは、超常現象やオカルトを懐疑的に扱い、科学的に検証しようとする人のことです。

「オーラ」って何?

――今回は「オーラ」なんですが、広辞苑ではオーラを以下のように説明しています。

オーラ【aura】

人や物が発する霊気ないし独特な雰囲気。アウラ。

⇒引用元:『広辞苑 第六版』P.374

「さすがルイ・ヴィトン。ブランド品はオーラが違うわ」なんて使いますが、この場合は「雰囲気」といった意味ですよね。でも、皆神先生にお聞きしたいのは、雰囲気という意味で使うオーラではなく、霊的な意味で使われるオーラなんです。

皆神先生 なるほど(笑)。

――霊的な方面でのオーラは「生命体が発散している霊的な放射体、生命エネルギー」といった意味で使われています。「あなたのオーラが見える」なんて人もいたりしますが、このオーラは実際にあるのでしょうか?

皆神先生 霊的なオーラは眉唾です。そんなものがあると証明されたことは一度もありませんし、恐らくこれからもないでしょう。

――でも、オーラが見えるという人も時々いますよね。となると、あれはみんな嘘なのでしょうか?

皆神先生 いや、それが一概に嘘とも限らないんですよ。「何かが見えている」と本人が感じていることが本当でも、そこに実際に何かがあるとは限らない場合があるんですよ。例えばアメリカの番組で、身長より少し高い衝立の向こうに人間を立たせ、衝立の上から漏れるオーラによって、どこに人が隠れているかを当てさせるという実験を行ったことがあります。しかし、全く当たりませんでした。本人が見えると主張していても、オーラは人の体から外部に客観的に放射しているものではない、ということです。

また、日本のオーラ研究者が自称「人のオーラが見えます」という人を集めて、同一人物のオーラがどのようなものなのか見てもらう実験を行っています。すると、「見える」という人の言うオーラは色や形状など全く一致しなかったのです。オーラが客観的に存在しているものなら一致しないとおかしいですよね。

――オーラの写真を撮った、なんて話がありますよね。手のひらから何か気のようなものが出ている写真があったりとか。あれは何なのですか?

皆神先生 ああ、それは「キルリアン写真」ですね。

――キルリアン写真って何ですか?

皆神先生 キルリアン写真というのは、「コロナ放電」による発光現象を撮影したものです。何でもいいんですが対象物に高周波・高電圧を掛けると電界が生じて、水蒸気の発散によって発光現象が起こります。これを撮影したのがキルリアン写真です。

発光の様子が太陽のコロナに似ているので「コロナ放電」といいます。なんだか不思議なものが揺らいでいるように見えるので「オーラを撮った」「生命エネルギーを撮影した」なんて言う人がいますが、人間だけでなく、石ころを撮っても写ります。水蒸気の発散による発光現象ですので、水分があれば何が対象でも写るのです。石ころでも写るのに、「生命エネルギー」なんて説明はヘンでしょう?

川口友万さんが『オーラ!? 不思議なキルリアン写真の世界』という本を出していますが、そこには非常にきれいな写真が掲載されています。手のひらや葉、花などからのコロナ放電による発光現象が見事にとらえられています。コインや鍵からも同様の発光現象が見られるので、「生体エネルギー」などではないことは分かっていただけるでしょう。

⇒著・谷口雅彦、川口友万『オーラ!? 不思議なキルリアン写真の世界』(双葉社)2016年

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%A9-%E4%B8%8D%E6%80%9D%E8%AD%B0%E3%81%AA%E3%82%AD%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3%E5%86%99%E7%9C%9F%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C-%E8%B0%B7%E5%8F%A3-%E9%9B%85%E5%BD%A6/dp/4575306541

人間の「感情が見える」人がいる! 「共感覚」の不思議

皆神先生 ただし、まれに「人間の感情が色として見える」「形に色を感じる」などの、普通とは違う感覚を持つ人がいます。

例えば、怒っている人が赤く見えたり、気分の落ち込んでいる人が青く見えたり、といったことが起こるのです。他にも、「9」ばかりがずっと並んでいる数列の中に一つだけ「3」があると、そこだけが色が変わって見えるので、すぐに分かるといった能力を持っている人です。

――それはすごいですね。

皆神先生 これは「共感覚」といって、感覚が混ざって認知されてしまうという現象で、人間の脳が見せる一種の「幻覚」です。

顔の表情などからその人が「怒っている」ことを読み取ると、なぜか色に変換され視覚上の認知になるのですね。脳の情報処理機構のどこかで、通常の感覚以外の別の感覚が生じ、それが混ざって認知されていると推測できます。普通の感覚とは異なる感覚が混ざるという意味で「共感覚」と呼ばれています。

人間の脳は「ないもの」を見ることがある

――霊的なオーラが見えるという人は共感覚の持ち主なのでしょうか?

皆神先生 その可能性もありますが、誤解しないでいただきたいのは、だからといって「人間には霊的オーラがある」ということではありませんよ。「共感覚」は脳の処理機構の一種のエラーであって、霊的なオーラが見えているわけではありません。

――そうですね。

皆神先生 「実際にはないもの」を見るという人はいます。しかし、それは不思議でも何でもありません。私たちは、世界をありのままに見ているわけではないのです。眼球−視神経から入ってくる情報は、脳で処理されて初めて認知できます。この処理過程で歪みが生じたり、エラーが生じたりすると「実際はないもの」を認知することがあり得るのです。

つまり、人間の脳は「実際にはないもの」であっても、見たと感じてしまうことがあるようにできているらしいのです。ですから、実際にはなくても、霊的なオーラが「見える」と主張する人がいても不思議ではない。

ただ面倒なのは、何らかの脳の働きによってその人にしか見えないものが見えている(いわゆる「幻視」を体験している)のか、あるいは、見えているかのように作り話をしているのかを見極めることは結構難しい、ということです。

――ありがとうございました。

「オーラが見える」という感覚は「共感覚」の可能性があり、「オーラを撮影した」というキルリアン写真も、特に不思議なものではないようです。アニメなどでは、その人が放つ生命エネルギーみたいな「オーラ」が登場することがありますが、どうやらそれはアニメ表現の世界だけの話のようです。

(高橋モータース@dcp)
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高橋モータース@dcp

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