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2012.06.30
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2012.06.30
思春期以降、多くの男性が一度は憧れを抱く「不良」。喫煙、腰パン、眉ぞりなど「俺、かっこいいだろ? 」と言わんばかりのドヤ顔で行っていた人も多いのでは? しかし、それらの行為は、女子からすると決してかっこいいものではないという。では、どうして男性はこうもワルを演じてみたくなるのでしょうか? 「昔はヤンチャしてた」や「俺もだいぶ丸くなった」という発言を繰り返す大人も多く、その謎は深まるばかり。男性が不良に憧れる理由とは?
「様々な要因が考えられますが、その中の一つに不良漫画の存在があります」
と教えてくれたのは、日本マンガ学会理事で京都精華大学マンガ学部准教授を務める吉村和真さん。確かに、現在29歳の筆者も『湘南純愛組』や『特攻の拓』を読んでは、不良に憧れを抱いていたなぁ…(ヤンキーにはなれなかったけど)。とすると、世代によって影響を受けているヤンキー漫画って変わってきますよね?
「そうですね。不良漫画の歴史は長く、1959年に創刊された『週刊少年サンデー』や『週刊少年マガジン』をはじめ、少年漫画誌に脈々と受け継がれています。例えば、不良というか世のはぐれ者という意味では、『あしたのジョー』(高森朝雄原作、ちばてつや作画)の主人公・矢吹ジョーもそうですし。なかでも一時代を築いたのは、『少年ジャンプ』を主舞台とした本宮ひろ志先生の『男一匹ガキ大将』や『硬派銀次郎』に代表される番長ものでしょう。70年代はいろんな作品でこのバンカラ気質が支持されていきます。
80年代になると、それまで孤高にして硬派の存在だった不良像に、お笑いや学園ラブコメの要素が入ってきます。『湘南爆走族』(吉田聡)などが代表例で、自分のことよりもチームや仲間を大切にしたり、女子の言動も気にかけたりしますね。同じ時期には世間の不良たちのファッションにも影響を与えた『BE-BOP-HIGHSCHOOL』(きうちかずひろ)もありますし、80年代後半には『ろくでなしBLUES』(森田まさのり)などが登場します。
90年代にはチーマー文化を取り入れた『GTO』(藤沢とおる)などが受け、2000年代には『莫逆家族』(田中宏)など、再び80年代のヤンキー文化を取り入れた漫画も人気を博していきます」(吉村さん)
吉村さん曰く、こうした不良イズムの流れは、近年の高橋ヒロシ先生の『クローズ』や『WORST』のような作品も含め、受け継がれているそう。それぞれの世代の不良の特徴は?
「60年代後半から70年代にかけての番長気質の主人公は、孤高の存在として自分を貫き、その姿勢に子分がついてくるような感じですが、貧乏だったり天涯孤独だったり、つまはじきものが多い。社会に受け入れられないからこそ、愚直なまでに自分の流儀を貫き通す…。そんなハングリー精神を持った主人公が多いですね。80年代以降になると、極端な経済格差は目立たなくなりますが、『仲間のためなら何でもする』ような意識の主人公が多く、現在までその傾向は続いていると言えます」(同)
確かにこう見ると、各年代でしっかり特徴が見えてきますね。しかし、不良のスタイルは変わっても、根底にある「男としての生き様」や「仲間を大切にする気持ち」は年代を超えても変わらないんですね。一説によると『ワンピース』(尾田栄一郎)と60年代のヤクザ映画は構造的に同じとも言われているそうです。そもそも、漫画の中の不良に憧れる心理って?
「自分がそうなれないから、なりたいと願う心理じゃないですかね。不良漫画の主人公は、孤高の存在だったり、仲間を大切にしたりと、総じて器が大きい。憧れるのも頷けます。また『女子が不良に憧れる』という傾向は、少年漫画だけでなく、少女漫画にも伝統的なパターンとして継承されています。しかし、その中で描かれる不良は真のワルではなく、雨の日に捨てられているネコを抱いて寂しそうな顔をするような、根の優しい青年です。少女マンガ的には、このギャップが一つの『萌えポイント』になり、不良が女子にモテるというわけです。ですが、現実世界の男性が不良を演じる場合、このギャップの部分がわかりにくいために、ただのワルぶっている人にしか見えず、女子ウケがよくないとも言えますかね」(同)
なりたくてもなれない存在だからこそ、ずっと憧れを抱き続けるんですね。きっと、昔のワル自慢をする人の脳裏には、当時憧れていた不良漫画の主人公が宿っているのでしょう。女子の皆さん、男性がワル自慢をはじめたら、温かい目で見守ってあげてくださいね!
(船山壮太/verb)
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