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2015.09.20
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2015.09.20
いい感じの音楽が流れるカフェで、男友達とごはんを食べていたときのこと。急に「この曲なんだっけ?」と言い出した彼。「調べようか?」と筆者がスマホに手を伸ばしたあたりで、「思い出した! この曲をプロデュースしている○○さんのあの曲がよくてさ…」と、音楽うんちくが始まったのです。なーんだ、最初のセリフは「オレ、音楽詳しいんだぜ」アピールをするための“フリ”だったのね。
この一件があってから、意識して会話するようにしてみたところ、“フリ”のなんと多いことか!
女友達は「全然カッコよくないよ」と言いながらイケメン彼氏の写真を見せてくるし(本音/「イケメンじゃん!」という褒め言葉を待っている)、後輩は「ちょっと締め切りがタイトだったんで…」と原稿を提出してくるのです(本音/「時間があればもっといい原稿が書けた。これが実力じゃないぞ」という言い訳)。うわ~、日本はいつからこんな“察してほしい”文化になってしまったの!?
「日本人は、昔から“話し手が匂わせて、聞き手が察する”という阿吽の呼吸で会話をしてきました。“本音と建前”というやつです。だから、それ自体は今に始まったことではありません。
しかし、SNSの普及で“常にゆるくつながっていて、チャット感覚でいつでもメッセージ交換できる”という状態ができあがってから、会話でも情報を小出しにするのが当たり前。“5往復やりとりして、やっと相手の真意がわかる”というような話し方にまで発展したのです」
と教えてくれたのは、作家・心理カウンセラーの五百田達成さん。なんともややこしい時代になったものですね。でも、それって面倒じゃないですか?
「現代人は、自分が傷つくのも相手を傷つけるのもイヤなんです。多少面倒なやりとりをするくらいでお互い傷つかずにいられるなら、そのほうがいいと思っているのでしょう。さらに、みんながコミュニケーション上手で、気配り上手。話下手な男の子なんてほとんどいません。
相手を傷つけないよう、“空気が読めない”と思われないよう、無意識に細心の注意を払って会話しているんです。でも、自慢したいという欲望はあるので、“一見自慢話だと思われない自慢話”をするために、もっと込み入った伝え方をします」(同)
その“一見自慢話に聞こえない自慢話”とは? 五百田さんに会話例を挙げていただきました。
(フリ)
「私みたいな数字に弱い人間が社長やってるなんて、世の中おかしいよね」
(本音)
「全然そんなことないよ、ちゃんと社長できてるじゃん!」というフォロー、もしくは「数字に弱いのにうまく会社経営できてるなんて、才能あるんだよー!」という褒め言葉を期待している。
(予防線)
「たしかに数字弱いよねー」と笑われてしまったら、一緒になって笑うことで自虐ネタだったということにできる。自慢自体はしていないので、「自慢話をする嫌なやつ」と思われる心配がない。
う~む、自虐ネタを装って自慢を挟み込んでくるんですね。たしかにこの自慢話なら、全然嫌味に聞こえません!
ほかにも「オレって童顔で、全然歳相応に見られないんだよね」と言う男子は「若いってことじゃん!」というフォローを期待していて、「背が小さいのがコンプレックス」と言う女子は「小さいのって可愛いよ!」という褒め言葉を期待しているのだとか。
しかし、こんなにも傷つくことにおびえていたら、好きな人に告白なんてとてもできないのでは?
「自分も相手も傷つけたくないから、生々しいやりとりが発生する一対一の恋愛関係はあまり流行らないし、告白するときも予防線を張るんです」(同)
五百田さんが教えてくれた、傷つかない告白フレーズはこちら!
(フリ)
「オレたち、まわりからは付き合ってるみたいに見えてるらしいよ」
(本音)
「えっ、私もそう思ってたけど」もしくは、「じゃあ、付き合っちゃおうか」という言葉を待っている。
(予防線)
「そんなわけないのにねー!」と返されてしまったら、「そうだよね」と同意すればOK。面と向かってフラれないので、気まずさも残らない。
なるほど~。鈍感な筆者はスルーしてしまいそうなほどさりげない!! どっちに転んでもリカバリーできるなんて、達人の域じゃないですか。
うっかり返事を間違えて、相手の期待を裏切ると、「コイツ、空気読めてないな」と思われてしまいます。達人同士の会話が繰り広げられる今、相手の言葉を“言葉通り”に受け取っていたら、大変なことになる…かも?
(小倉杏)初出 2013/12/18
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