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2016.05.05
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2016.05.05
近年の日本の漁業従事者数は約17万人だそう。国内の就業者数全体で見ると約0.2%、500人に1人が従事していることになります。さて、漁業といえば漁師さん。もし漁師の男性と出会って結婚をしたら、どんな生活が待っているのでしょう。今回はご主人が底曳き漁(漁船から綱を伸ばし、その網で海底をさらうように引き魚を獲る漁法のこと)をされている戸田美保子さんに結婚後の生活を教えてもらいました。
漁師という職業を耳にしたことがない人はいないと思いますが、実際にどんな暮らしをしているか一般的には馴染みが薄いもの。結婚に不安はありませんでしたか?
「私はサラリーマン家庭で育ち、主人とは知人の紹介で知り会ったので、結婚するまで漁師という職業がどんなものなのかあまり分っていませんでした。他の仕事とどう違うのかも分かりませんでしたし、“たくさんある職業の一つ”くらいの捉え方だったので、それほど特別に感じていませんでした。私より、両親の方が心配していましたね。両家の顔合わせのときに私の母が『なにもできないうちの娘が、魚を触れるとは思えません……』って、必死になって主人の両親に言っていました」(戸田さん)
大好きな人との結婚にそれ以上の予備知識なんて必要ないのかもしれません。戸田さんの思い切りの良い人柄も伝わってきますね。
とはいえ、ご両親が心配したような苦労はありませんでしたか?
「生活のリズムが違うところですね。漁師の妻には主人の生活に合わせる柔軟性が必要だと思います。主人は漁をする傍らで鮮魚の卸販売も行っているのですが、昼の11時頃から夕方まで魚の競りや配達を行い、その後、翌朝まで漁に出ます。そうして帰宅してから朝の5時~10時頃までが就寝時間。睡眠時間は5時間とれるかとれないかで、とてもハードな生活を送っています。自然相手ですし、結婚当初は帰宅時間が読めず、出かけてのんびりしていたら主人が帰って来ていたということも何度か。とはいえ今はある程度計算できるようになりました」(同)
戸田さんは天気を気にして空をよく眺めるようになったそう。まさに漁師の妻といったイメージですね。
自然相手だとなかなか予定を立てづらいかもしれませんが、逆にのんびりできることもあるのでは?
「雨風で突然漁が休みになることがあっても、網を縫ったり漁に出るための雑務や漁師仲間同士で手伝いもありますから、休みは月に4日も取れればいいほど。想像していた以上に休みがとれません! 家族行事を予定していても実現しないことが多く、結婚当初は予定の変更になかなか快く対応することができませんでした。それから漁師仲間との飲み会が週に数回はあり、もう少し減らしてもらえたらと思うことも……(笑)。でも、天候ばかりはどうにもなりませんし、漁師として生活するには仲間との付き合いも重要なんだと理解してからは、気持ちのスイッチがラクに切り替えられるようになりました」(同)
ご近所での付き合いや助け合いの少なくなった昨今ですが、夫の仲間づきあいを理解し見守る昔ながらの妻の姿が目に浮かびます。
魚を獲る姿ばかりをイメージしてしまっていましたが、漁以外にも様々なことがあるんですね。
「第一次生産者は国の宝と言われていますが、命を張った仕事なのに道は険しいのが現状です。一昔前までは魚がたくさん獲れていたものの、今では海に魚が少なくなり、漁師だけでは生活が厳しくなりました。そこで先に述べた魚の卸販売もはじめることになったのですが、ちょうど私も妊娠を機に会社を辞めたこともあって店番をすることに。結婚当初は魚に触れませんでしたし、触ろうとも思いませんでしたが、もともと料理が好きだったこともあって、このときに魚のさばき方を学び、腕を磨きました」(同)
そしてついにご自身で魚料理教室を開くことになった戸田さん。おいしい魚料理を教えながら、『魚食普及』することで夫の仕事をサポート! 漁師の妻の新しい形かもしれませんね。
「やっぱり新鮮な魚を持ち帰ってくれると、うれしいです! 漁師の妻の魅力はなんといってもおいしい魚が毎日食べられること。『安全』で『おいしい』、そしてたくさんの『健康パワー』が詰まった魚が食べられることが、なによりの特典だと思っています(笑)」(同)
食品の安全性が問題視されているなか、何の心配もせずに夫の獲ってきた新鮮でおいしい魚を食べられる…。考えてみればこれは本当に幸せなことですよね。その分の食費も浮きそうですし(笑)
漁師との結婚生活には自然を相手にしていく厳しさはもちろんあります。でも、今回お話を伺って、そうした困難を夫婦二人三脚で乗り越えていくことで、それ以上に充実した時間を過ごせたり夫婦の絆をより強く感じられたりするのだと思いました。
(ウチダモモコ/コンセプト21)初出 2015/4/30
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