心が弱りやすい季節…　『9月病』の特徴と上手な過ごし方、接し方

　突然ですが「9月病」という症状があるのをご存じでしょうか？ 季節が起因する症状と言えば、新入社員や新入生などが新しい環境に適応できずに心を病んでしまう「5月病」がよく知られていますが、あまり聞きなれない「9月病」とは一体どんな症状なのでしょうか？ 心の悩みや恋愛問題にも詳しいカウンセリングルームOZ銀座の心理カウンセラー・大関洋子さんに伺いました。

現実からの距離が遠ければ遠いほど戻るのに苦労してしまう…

「9月病は、夏休み明けで気分の切り替えがうまくいかないときに出る、うつ症状のことを指します。学校でも夏休み明けに不登校が増えたりしますよね。もともとは夏の休暇が多かったところで多く見られる症状だったようですから、職場での夏休みの長期化は9月病を引き起こしやすくしていると考えられます。最近では、休暇の長さだけでなく、例えばテーマパークや海外旅行など、現実の生活とかけ離れたところに行ったりすることも原因になっています。そういった体験は、リフレッシュにもなるんですが、現実からの距離が遠ければ遠いほど、現実に戻るのに苦労することになるからです。また、季節の変わり目で急激な温度の変化に体がついていかないために、心身のバランスが崩れストレスを感じる人もいると聞きます」（大関さん）

　確かに9月って、休みボケと激しい気温差で体調を崩す人も多いですよね。そういった体調を崩しやすい時期だから、うつが発症しやすいということですね。

「そうですね。5月と9月は季節が関係してうつ症状が出やすい時期なので、『5月病』、『9月病』と名前がついたと考えられます。うちのカウンセリングルームでも、5月と9月は、年間でもっともうつ症状の患者さんが多くなる時期なんです」（同）

　うつ病と9月病では、症状の違いはあるのでしょうか？

もし自分が9月病になったら？

「症状は一般的に言われるうつ病とほぼ同じです。眠れない、食欲・性欲も湧かないなどのほかにも、活発さがなくなったり、喜怒哀楽の感情が薄れていきます。不安や焦燥感を感じることも多くなりますね。真面目な人や几帳面な人、他人のことを気にしがちな人がなりやすいタイプです。こういった人達は、繊細かつナイーブで優しい心を持っている人が多いんです」（同）

　もともと、うつの気がある人は、9月は心が弱りやすい季節だと心得ておいたほうがいいですね。もし自分がこのような症状になったら、どうすればいいですか？

「しっかりと自分のダメなところやネガティブな面を認めてあげることが大切です。『イライラしている自分』や『やる気がでない自分』が出てきたら、それを否定しないで、すべて自分の一部であると認めてあげてください。『そういう自分も私の大切な部分！』と思って、その気持ちに寄り添えれば、自然と症状は緩和するはずです」(同)

　では、もし恋人や好きな人が9月病になったら、どう接したらいいのでしょうか？

恋人や好きな人が9月病になったときは？

「その場合は、あなたが『受け皿』になることを意識して接してください。そして、あまりアクティブな遊びではなく、食事や映画などのゆったりできるデートに誘ってあげてください。ただし、『どうしたの？』とか『元気だして』などと聞くのは絶対にダメ。何も言わずにただ一緒にいるだけでOKです。恋人が心を開いて、色々と話してくれたら、『繰り返し技法（ミラーリング）※』で、じっくりと話を聞いてあげてくださいね」（同）

　なるほど。静かに寄り添ってあげることが大事なんですね。

　また、9月は「恋愛にとっても大切な時期」だと大関先生は言います。それはなぜですか？

「この時期は心が弱っている人が多くなりますし、本能的に人が人を恋しくなる季節なんです。これまで恋をするのは春や夏がいいとされていましたが、センチメンタルになりやすい9月にその人を支えてあげられれば、より一層愛を深められるんですよ」（同）

　春や夏は「恋がしたくなる季節」。一方、秋は「人恋しくなる季節」。同じ恋でもアプローチの仕方が大きく異なりそうですね。心が弱りやすいこの時期、恋人や気になる人が元気をなくしていたら、やさしくそっと手を差し伸べてあげましょう。

※繰り返し技法（ミラーリング）…相手の言葉を繰り返しながら会話を進行させること。人は自分と同様の仕草や動作を行う相手に対して好感を抱くと言われている。

(船山壮太/verb)

初出 2012/9/29