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2015.12.13
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2015.12.13
男女の恋愛の形にもいろいろなケースがあり、最近では入籍をせずに事実婚の形をとるカップルも増えています。もし仮に「籍を入れないまま一生涯を貫く」と決めた場合、入籍をして結婚生活を送るのと比べてどんな違いがあるのでしょうか。
例えば「パートナーとなる相手はいるけれど、自分の収入で生活できる余裕はあるし、籍は入れなくていい…」という女性が「事実婚」を選んだ場合、社会的に不利益を被ることってあるのでしょうか。
「そもそも事実婚とは、婚姻届を提出せず、戸籍上夫婦の名字が一緒にならないカップルのことを指します。『社会的に見ても夫婦同然の生活を営んでおり、婚姻の意思はあるが法律上の手続きをしていない男女』という意味で、『内縁』という言葉も事実婚と同じ状態のことを言います。夫婦が同じ名字になる『法律婚』との違いは紙一枚のようですが、両者の待遇には大きな差が出ることがあるんです」
と教えてくれたのは、佐藤大和弁護士。佐藤弁護士によると、籍を入れる(法律婚)と入れない(事実婚)の決定的な差は「税金」関連にあるとか。
「日本は税金に対して非常に厳しい国です。徴税の便宜からも法律婚主義を採用しており、事実婚の場合は『配偶者控除』『扶養控除』といった項目が認められません。そのため、所得税や贈与税といった税金が軽くなる優遇を受けることができないのです」(佐藤弁護士)
あくまで法律婚しか優遇されないんですね…。では、金額にどのくらいの差が出るのでしょうか?
所得税の場合、一般の配偶者控除の額は38万円。仮に、夫の課税される所得金額が330万円を超え695万円以下だとすると…
38万円×所得税率20%=7万6千円
つまり、7万6千円分、税金が安くなります。このまま結婚生活を20年続ければ、152万円の税金が免除されるということですね。ただし、配偶者控除が認められるのは、納税者と生計を共にしていて、年間の給与収入が103万円以下の人。夫婦どちらともそれ以上の場合や、どちらかの収入が1,000万円以上の場合は控除の対象外となります。
要するに、これらに該当する夫婦であれば、「配偶者控除」、「扶養控除」が受けられないことは「事実婚のデメリット」にならない…とも考えられるわけですね。
一方で、事実婚にも優しいのが「社会保障制度」だと佐藤弁護士。
「医療、健康保険、年金などの仕組みにより、国が国民の生活を保証する社会保障制度。これは法律婚と待遇の差はありません。ただし前提として、事実婚であることを証明する手続きが必要です。具体的には、住民票を同一世帯にし、世帯主である夫との続柄を『妻(未届)』と記載して提出することが一つの方法。
もう一つの方法としては、準婚姻契約書(内縁契約書)を作成すること。この契約書には、事実婚であることの確認事項や、貞操義務、事実婚を不当に解消された際の慰謝料や財産分与等について記載します。これらの書類があれば、事実婚でも妻は配偶者とみなされ、パートナーが厚生年金に加入していれば、法律婚同様、専業主婦は第3号被保険者になれます。また、事実婚の夫が亡くなったときは遺族年金も受け取れますし、もし離婚(事実婚を解消)した場合でも年金分割が可能です」(同)
なるほど。「事実婚は税金には厳しいけれど、社会保障では手続きさえ踏めば不利にならない」と覚えておきたいところです。
ちなみに事実婚の解消は互いの合意があれば法的手続きなしでも成立します。ただし事実婚の夫の死後に新たな事実婚のパートナーができた場合は、前夫の遺族年金をそのままもらい続けると不正受給になる可能性も。トラブルを避けるためにも、状況が変わった際は社会保険事務所に報告しておくべきでしょう。
そのほかにも、「籍を入れる」or「入れない」で権利が異なるシーンはあるのでしょうか?
「民間サービスにおいては、携帯電話会社の家族割引などが適用される場合とされない場合、両方あるようです。企業によって異なりますが、運転免許証や保険証などで夫と妻の住所が一致しているならば、家族割引が適用可能となるケースが多いよう。同様に、飛行機のマイレージ共有や映画館での夫婦割引など、事実婚でも特典が使えるシーンは多いでしょう」(同)
佐藤弁護士いわく、「法律婚と事実婚、どちらが良くてどちらが悪いというわけではありません。彼に借金があるため、返済するまでは籍を入れずに事実婚にしておきたいというカップルがいたり、籍を入れたカップルでも仕事上では旧姓を名乗っているケースもあります。それぞれの特徴をしっかり知った上で、自分たちの生活スタイルに合った形を選べば問題ないはず」とのこと。
ところで、「籍を入れる」or「入れない」の大きな違いは分かりましたが、このカップルに子どもがいた場合はどのように事情が異なってくるのでしょうか? 次回は「子どもと認知」について斬りこんでいきたいと思います。
(池田香織/verb)初出 2013/7/8
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