ヒトメボ

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 空港で海外のイケメン俳優が来日したとき、あるいは男性アイドルのコンサートで聞かれる声。大方の日本人なら「キャー」と言う「黄色い声」を想像するのではないでしょうか。

 ところで、この悲鳴のような熱い歓声はなぜ「黄色」と例えられているのでしょう? 興奮や熱狂を表すのであれば、「赤い声」のほうがしっくりくるような気も…。調べてみると、いくつかの説が存在しました。

1.「お経がルーツ」説

 お経というと一定の音程でとつとつ唱えるようなイメージですが、このスタイルが主流になったのは平安末期以降。それまでのお経は、音の高低が激しいものもあり、経典に音譜を記す代わりに墨を使って印がつけられていたんだとか。さらに、色を使って音の高さを表現するものもあり、その中で一番高い音を示していたのが、「黄色」だったのだそう。こうしたことから、「高い声」を「黄色」と表現するようになったそうです。また、中国古代の高僧たちは、低い声を読むときの経典には、緋(あか)でしるしをつけていたことも明らかにされています。もしかすると過去には、「低くくぐもった声」を示す「赤い(緋い)声」が存在していたかもしれません。

2.「江戸時代末期の流行表現」説

 一方で、江戸時代末期の流行言葉が由来という説もあります。当時、声を色で表現するのが流行したそうです。実際、その時期に式亭三馬によって書かれた小説『浮世風呂』の中には「黄色な声や白つ声で、湯の中を五色にするだらう」という一文も残されています。また、三省堂大辞林辞典には「白声(しらごえ)」はかん高い声を意味すると記載されていて、「黄色い声」と似た意味で表現されていたようです。そもそも「黄色い声」は、ただごとではないときや耳障りなときに使う声の表現として頻繁に用いられていたらしく、その意味が次第に「女性のかん高い声」の意に変化した…という説もあるようです。

 ちなみに、中国で「ただごとではない」ことを表す漢語は「黄」。この有力な2説はいずれも起源が中国であることから、「黄色い声」のルーツは中国と考えられそうです。

3.「共感覚」論

 赤ちゃんの甲高い泣き声は世界共通で440hzの「ラ」の音として認知されており、音に色が見えることを表す色聴(coloerd hearing)・共感覚(synesthesia)なる特殊な能力を持っている人にとって、黄色く見える声というのは「ラ」の音とされていることが、1931年のカール・ジーツという心理学者の実験によって明らかにされています。そこから「子供の甲高い声」の音程と「黄色い声」を結び付けて考える説もありました。

 「声色」という表現があるように、声と色って昔から深い関係があるんですね。イケメン俳優やアイドルに対して起こる歓声や悲鳴も、彼女たちにとって「ただごとではない」ことが起こっている…と思えば、「黄色い声」という表現やその行動も、納得できますね。それにしても興味深い、色を用いた比喩の世界。今後も何気ない日常のナゾを追及していきたいと思います!

(冨手公嘉/verb)
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ライター

冨手公嘉

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