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2019.06.10
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2019.06.10
幽霊が写り込んだ「心霊写真」は、かつては「心霊スペシャル」といったテレビ番組で紹介されたり、子供向け雑誌などで特集されたりするなど、大変に盛り上がったものです。ところが! 子供たちを震え上がらせたこの「心霊写真」も最近ではあまり見かけなくなりました。これはなぜなのでしょうか!? 日本最強のデバンカーといわれる皆神龍太郎先生にお話を伺いました。
※「デバンカー(debunker)」とは、超常現象やオカルトを懐疑的に扱い、科学的に検証しようとする人のことです。
――かつては盛り上がった心霊写真も最近はあまりぱっとしない感じですよね。そもそも心霊写真はいつからあるものなのでしょうか?
皆神先生 ご存じないかもしれませんが、心霊写真は19世紀の半ばぐらいからありますよ。写真が発明されてからほとんど間を置かずに現れたと言ってもいいと思いますね。
――本当ですか?
皆神先生 本当です。銀板写真は1839年にルイ・ジャック・マンデ・ダゲールによって発明されましたが(そのため銀板写真 は「ダゲレオタイプ」と呼ばれます)、1851年には湿板写真が発明され……と写真技術はどんどん進歩していきました。1860年代初頭にはすでに「人物の後ろに霊のようなものが写っている写真」があったようです。
当時、最も有名だった心霊写真の撮影者はウィリアム・マムラーという人で、アメリカ合衆国最初の「心霊写真家」といわれています。彼の撮った心霊写真で一番有名なのが、エイブラハム・リンカーンの奥さんを撮った一葉です。これは1872年に撮影されたものですが、彼女の夫であったエイブラハム・リンカーン大統領(1865年に死去)が後ろに立ち、彼女の肩に手を掛けているように見えます。
――初めて見ました。
皆神先生 すごく有名な写真なんですけどね(笑)。
――どうやって撮ったのでしょうか?
皆神先生 簡単にいうと「多重露光」という手法です。「二重露光」や「二重写し」といわれることもありますが、複数の画像を一つの撮像板に写し込むのです。
当時は、ヨウ化物を塗ったガラス板を感光させることで写真を撮っていた(これが湿板写真) のですが、ガラス板を使いまわしていたので、前に撮った画像が次の写真に薄っすらと被さってしまい、「心霊写真もどき」が自然に生まれたのです。
マムラーはこの現象を心霊写真と称してうまく利用し、彼の写真スタジオは非常に繁盛したそうです。また、ヨーロッパでも同様の心霊写真が評判となり、こちらも大人気でした。パリで写真スタジオを営んでいたエドゥアール・ビュゲーという人が特に有名です。19世紀末にはオカルトブームがありましたが、心霊写真ブームはその盛り上がりにひと役買ったのではないでしょうか。
――日本で心霊写真といえば、何といっても1970年代のオカルトブームですね。つのだじろう先生の『うしろの百太郎』『恐怖新聞』といった名作漫画もありましたし、心霊写真も子供たちの間で盛り上がっていました。
皆神先生 いろんなものが楽しめるいい時代でしたね(笑)。
――現在では心霊写真も盛り上がらなくなりましたが、これはなぜでしょうか? 心霊写真が撮れなくなったということでしょうか。
皆神先生 「心霊写真に見えるような写真」が撮れなくなった、ということはあるかもしれません。これは、スマホも含めて「デジタルカメラ」の普及と技術の進歩が主な原因でしょう。デジタルカメラが登場し、しかも高性能になったおかげで、
といったことが達成されました。これが心霊写真を激減させたと考えられます。逆にいえば、「ピンボケ」「ぶれ」「多重露光」「暗室作業」などが「心霊写真に見える写真」を生み出していたということですね。特にフィルムの巻き上げ作業がなくなったので、マムラーも利用していた「二重写し」が自然に消えたことが大きかったと思います。
――なんだかガッカリですね。
皆神先生 まあまあ(笑)。心霊写真が盛り上がらないもう一つの要因は、画像編集ソフトの普及ですね。『Photoshop』などのソフトを使えばどんな画像だって作れますし、そのことをみんな知っています。ですから、ちょっとぐらい不思議な写真画像があったとしても誰も大して驚きません。誰でも作れるので、心霊写真から不思議さとか神秘さといったものが失われてしまったのですよ。
実際、メディアに依頼されて心霊写真を1点2万円で作っていました、と暴露した人もいますから(以下URLを参照)、まあ心霊写真といわれるものに本当に幽霊が写っていると信じる方が無理でしょう。
⇒参照記事:『Smart FLASH』「『テレビの心霊写真』は私が作った!ギャラは1枚2万円から!」
https://smart-flash.jp/entame/51588
――昔のような「心霊特番」もなくなってしまいましたね。
皆神先生 それは、テレビ局のコンプライアンスがそういう番組を放送することを許さないからでしょうね。視聴者の皆さんから大量の突っ込みがきて、テレビ局の掲示板が炎上する、みたいな番組はやはり制作できないでしょう。
――ありがとうございました。
心霊写真は最近とんと盛り上がらなくなっていますが、その理由は「デジタルカメラ」の普及と高機能化、画像編集ソフトの普及にあるようです。静止画が駄目なら動画だ!というわけで、幽霊を撮ったというビデオがYouTubeなどで話題になることもありますが、動画編集ソフト、CGの制作ソフトも高機能化していますので、多くの人はあまり驚かないですよね。現在は心霊も身の置き所に困る時代なのかもしれません。
(高橋モータース@dcp)
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