ヒトメボ

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映画会社はそれぞれ自社の「オープニングロゴ」を持っていて、映画の上映スグに必ずスクリーンに映ります。20世紀フォックスならサーチライトに照らされる会社のマークがファンファーレと共に現れますし、松竹映画の場合は「富士山をバックに松竹映画の文字」ですね。この松竹映画のオープニングロゴはいつから使われているのでしょうか? またなぜ富士山なのでしょうか? 松竹株式会社 経営企画部 広報室にお話を伺いました。

松竹映画のオープニングロゴの「富士山」とは?

――松竹映画の「富士山」はいつから使われていますか? また、なぜ「富士山」を使うようになったのでしょうか?

この2つの質問につきましては、諸説があり、確たる見解を申し上げることができません。

1936年(昭和11年)の大船撮影所開所以来との報道もありますが、小津安二郎監督の『一人息子』(1936年)には、「大船映画」のバックに富士山がありますが、同じ小津監督の1947年(昭和22年)の映画『長屋紳士録』では「松竹映画」のバックに富士山はありません。「富士山」の登場は作品次第、監督次第だった時代があったようです。

――なるほど。当時はオープニングロゴについての規定がなかったのかもしれませんね。では、オープニングロゴに登場する「富士山」は誰が撮影したものでしょうか?

これも正確にいつからとは言えませんが、当初は、大船撮影所のステージ内で撮影された「富士山」でした。例えば以下のような記述が「2000年3月&4月号」の社内報にあります。

「朝から昼にかかる富士山の、時の移ろいを配給タイトルとして、大船撮影所第4ステージで2日間に亘り、シネスコ・ビスタ・スタンダードの三種類の撮影が行われました。

下地に石膏で形作られた1m80cmの富士山のミニチュアは、30cm高の台上に置かれ、その廻りを浅い水槽で取り巻き、ドライアイスを流し、その手前に移動レールの上に1m80cm幅に綿を置き、キャメラと綿雲の間にフォグメーカーでスモークを流すという三重構造で雲を作ったそうです。この雲づくりが微妙で一番苦心したようです。

この富士山は『忍野村から見た形』で、実際の富士山では角度が緩やかすぎて、写真集や絵画を参考にし、最終的には横山大観の富士山の形が良いということになったそうです」

――えっ! あれは実際の富士山ではなく、ミニチュアの富士山を造って撮影したものだったのですか!? また横山大観先生の絵の富士山を参考にしていたとは驚きです。

2015年以降は新オープニングロゴに!

2015年以降の洋画以外の配給作品には新しいロゴマークが使われています(洋画は富士山のイメージ映像を使用しています)。

2013年6月、富士山が世界遺産に登録されたのを契機に、新松竹マーク製作の準備を開始しました。2013年11月22日から27日にかけて「山梨県新道峠」にて撮影を敢行し、22日の晩に快晴の星空とクリアな富士山として撮影がかないました。また、雲海の撮影は富士山側からの撮影で、5合目から見事な雲海を収めることができました。ちなみに11月22日は、松竹の創立記念日なのです。

撮影は8Kレベルの高解像度カメラを使用し、将来的に4Kの原版が必要となった場合も対応可能な素材を確保しました。その後、CG合成等を経て「新松竹マーク」を完成させました。先ほども申し挙げたとおり、この新松竹マークは2015年以降の配給作品(洋画以外)に使用されています。ですので、今皆さんが劇場でご覧になるオープニングロゴは全て新松竹マークです。

――ありがとうございました。

新旧の富士山は以下の動画で確認できます。ぜひ見比べてみてください!

⇒第1作『男はつらいよ』予告編

⇒2019年5月17日(金)に公開される公開『居眠り磐音』予告編

『松竹キネマ合名社』が設立され、映画製作が開始されたのは1920年のこと。ですので、松竹株式会社は映画製作についてほぼ100年の歴史を持つことになります。オープニングロゴでなぜ富士山が使われているのか、いつから使われているのかは、残念ながら正確には分かりませんでしたが、映画会社として世界でも指折りの歴史あるロゴマークであることは確かです。最新のロゴマークは、8Kカメラで実際の富士山を撮影した原版を基にしているとのこと。ロゴマークも時代に合わせて変化していくものなのですね。

(高橋モータース@dcp)
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高橋モータース@dcp

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