ヒトメボ

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かつて新聞などのテレビ欄に「Gコード」と呼ばれる数字が印刷されていました。現在はなくなってしまいましたが、このGコードは何のために存在していたのかご存じでしょうか? 今回は、知らぬ間に消えた「Gコード」について調べてみました。

録画予約を簡単にするために生まれた

ITメディア『週刊BCN』を手掛ける株式会社BCNのチーフエグゼクティブアナリスト・道越一郎さんに、Gコードとはなんだったのか、どのような影響をもたらしたのかなど、お話を伺いました。

――若い世代は存在を知らないかもしれませんが、「Gコード」とは何だったのでしょうか?

道越さん Gコードというのは、「アナログ放送番組の放送日時や放送チャンネルなどの情報を、独自のアルゴリズムで最大8ケタの数字に変換したもの」です。1988年にアメリカのジェムスター社が、アナログ番組の録画予約を簡単に行うことができるように開発しました。

――昔は録画予約するのが面倒でしたよね。

道越さん 放送日、時間、チャンネルなど、全て手作業で入力しないといけませんでしたから、とにかく手間が掛かりました。しかし、Gコードなら最大8ケタの数字を入力すれば録画予約ができてしまうので、画期的な発明だったと思います。

――そもそも、なぜ数字を入力するだけで録画予約ができたのでしょうか?

道越さん 専用の機器にGコードを入力すると、Gコードの内容に沿ってビデオデッキに赤外線を飛ばして「起動」「録画」「停止」を行う、というものでした。仕組みは意外とシンプルだったのですよ。

私たちの生活に影響を与えた

――Gコードが導入された当時の反響はどうだったのでしょうか?

道越さん 専門誌で紹介されるなど、かなり注目されていましたね。ただ、当初は「ビデオ・プラス」という別売りの機器を買わないと使えなかったので、便利だけどそこまで広くは普及しませんでした。その後、内部に機器が内蔵されたVHSデッキが販売されるようになりました。この辺りからGコードが一般的になっていったと思います。

――Gコードは私たちの生活にどのような影響を与えましたか?

道越さん 録画予約が簡単に行えるようになったことで「時間差視聴」が加速したと思います。かつては、テレビ番組の録画は「保存」という意味で行われるのが一般的でした。例えば、レンタルしないと見られない映画などがテレビ放送された際に録画して、後で何度も楽しむ、といった感じです。

――確かに昔は映画を録画したVHSテープが何本も家にありました。

道越さん しかし、手軽に番組の録画ができるようになったことで、「外出して見られない番組は、録画して後で見ればいい」という人が増えました。必ずしも番組をリアルタイムで見る必要性が薄れたと思います。Gコードを複数入力すれば、録画予約も複数できますから、テープの残量にさえ注意すればいろんな番組が録画できましたからね。今は時間差視聴が当たり前の時代ですが、その礎を築いたのがGコードなのかもしれません。

――ライフスタイルを変えてしまうほどの影響があったのですね。

消えてしまったGコード

――私たちの生活に影響を与えるほどだったGコードですが、なぜ需要が小さくなっていったのでしょうか?

道越さん まずは1990年代後半に「電子番組表」が登場したことが挙げられます。当初はインターネットに接続して番組表をダウンロードする仕組みで、あまり一般的ではありませんでしたが、2000年にBSデジタル放送が始まったことで電子番組表の需要が加速しました。電子番組表から録画予約できるようになったので、Gコードの需要が減ったのです。DVDレコーダーの普及も直接影響したでしょう。

――確かに電子番組表から直接予約する方が楽ですね。

道越さん とはいえ、2000年代はビデオデッキを使っている家庭がまだ多かったので、新聞などにはGコードが掲載されていました。しかし、2011年にアナログ放送から地上デジタル放送に移行したことで、ほとんどの新聞からGコードが消えたのです。Gコードはアナログ放送でしか使えませんからね。

――デジタル放送の時代では無用になってしまったのですか……。

道越さん デジタル移行後もしばらくはサイマル放送が続いたので、Gコードを掲載しているインターネットの番組表もあったみたいですが、現在では完全に消えてしまったようです。とはいえ、テレビ局でも新聞社でもビデオ機器メーカーでもない第三者が考えたものが、これほど普及してビジネスになるのは相当すごいことだったと思います。

――Gコードは歴史的な発明だったのですね。

いつの間にか登場し、いつの間にか消えてしまった「Gコード」ですが、現在のテレビライフにも通ずる「時間差視聴」を加速させた画期的なものだったようです。当時は当たり前のように使っていましたが、歴史を振り返ってみるとその影響力がどれだけ大きかったのかが分かりますね。

取材協力:株式会社BCN

https://www.bcn.co.jp/

⇒週刊BCN

https://www.weeklybcn.com

⇒BCN+R

https://www.bcnretail.com/

(中田ボンベ@dcp)
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中田ボンベ@dcp

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