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2016.11.04
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2016.11.04
「最低!」という言葉とともに、目の前にいる恋人にグラスの水を浴びせる…。ドラマでよく見る光景ですが、実際にやったことはなくても、やってやりたくなるぐらい、頭に来ることもありますよね。たかが水ぐらい大したことないようにも思えますが、現実で恋人に水をかけてしまうと、犯罪になってしまうので要注意です。
「水をかけたくらいじゃ怪我をさせることもないし、罪になるわけがない、と思われるかもしれません。しかし、水をかける行為も暴行罪にあたります。
判例では、刑法208条にいう『暴行』について、「暴行とは、人の身体に対する不法な攻撃方法の一切をいい、その性質上傷害の結果を惹起すべきものであることを要せず」とされています(大判昭8.4.15)。簡単に言うと、怪我を負わせることのないような行為でも、人の身体に対する不法な攻撃方法であれば、暴行罪に問いうる行為となるのです」(アディーレ法律事務所・岩沙好幸弁護士)
具体的にはどのような行為が暴行とされるのかというと…。
「過去に裁判で暴行と認められた行為の中には、人の身辺で大太鼓・鉦等を打ち鳴らす行為(最判昭29.8.20)、他人の頭・顔にお清めと称して食塩を振りかける行為(福岡高判昭46.10.11)等があります。従って、水をかける行為も、暴行罪となる可能性が高い行為だということになります」(同)
「また、水ではなく、熱湯やホットコーヒー、あるいは薬品などの液体をかけた場合、皮膚に火傷やただれなどを生じることがあります。この場合、他人の身体に対する暴行により健康状態の不良な変更を生じさせた、つまり、傷害の結果を生じさせたことになりますので、暴行罪ではなく傷害罪(刑法204条)に問われることになります。
暴行罪の刑は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料、傷害罪の刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金と定められています」(同)
当然ですが、相手に怪我をさせてしまうと、罪はもっと重くなってしまいます。でも、喧嘩の末にカッとなって水をかけてしまったぐらいで、本当に逮捕されたり刑務所に行くことになるのでしょうか?
「実際には、起訴される前に弁護士が被害者との示談を成立させるなどして、裁判まで至らず刑も科せられずに済むケースが多いでしょうが、カッとなって飲み物をかけたくらいで刑務所に入れられるかもしれない、と考えると、意外と重いですよね。
なお、厳密には洋服を汚したとなると暴行罪の他に器物損壊罪が成立する可能性はありますが、暴行罪についてのみ処罰が検討されるケースが多いでしょう」(同)
「また、飲み物などをかける行為は民事上も損害賠償責任を生じ得ます。単なる水なら乾けば元通り、と考えがちですが、皮製品等は、単なる水でもシミになることがありますし、素材によっては縮みや風合いの変化等を生じます。クリーニングで元通りになるのであれば、クリーニング費用程度の弁償で済むと考えられますが、元通りにならずもう着られないような場合、飲み物などをかけられた当時の評価額相当の損害を賠償する責任を生じます」(同)
評価額相当ということは、購入した際の新品の値段ではなく、現在の価値の値段。洋服などであればさほど高額にならずに済みそうな気もしますが、
「相手が弁護士を使って損害賠償請求をしてきた場合には、その弁護士費用も賠償しなければならなくなることもあります」(同)
浮気男に水を浴びせ、颯爽と喫茶店を去っていく…なんて、ドラマで見ている分には「ちょっとかっこいいな」と思っていましたが、ほんの一瞬我を忘れてしてしまった行為が、とんでもなく高くつくこともあるということですね。
(岩沙好幸 弁護士/アディーレ法律事務所)
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