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2016.06.21
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2016.06.21
長年付き合っていた恋人に、突然一方的な別れを告げられる……。ドラマだったら新しい恋が始まる伏線にすぎず、すぐに次の出会いがあるかもしれません。でも、現実はどうでしょう? 長い時間、悲しみに沈んでしまうこともあるのではないでしょうか。理不尽な振られ方をしたショックから、相手に慰謝料の請求をしたくなってしまうことだってあるかもしれません。
まず、慰謝料などの損害賠償請求ができるのは、法律上「不法行為」といって、故意や過失により、誰かから権利や法律上保護された利益を侵害されたときとされています。
では、そもそも「交際関係」とは法的にどんな意味があるのでしょうか。
冷たいようですが、「法は関与しません」という扱いになっています。事実上「好き合っている者同士が一緒にいる」だけにすぎず、原則として自由恋愛(別れるも付き合うも自由)であり、法的に保護される関係ではないためです。
つまり、交際関係は「権利」でも「法律上保護された利益」でもないので、たとえ、相手に浮気をされたうえに振られたとか、突然相手が結婚したとか……。どんなに理不尽な振られ方をして、どんなにツラい思いをしたとしても、慰謝料の請求は基本的に認められないのです。
単なる交際から一歩進んでお互い結婚を誓い合っていた、「婚約が成立している」場合には、正当な理由なくその約束を破ると、慰謝料などの損害賠償を請求できます。
「婚約」は口約束でも成立しますが、知人や友人への紹介、結婚式の準備、結婚指輪を交換した、結納をした、長期間の同棲があるなどの外形的な事情も含め、夢物語やリップサービスにとどまらず、本当にお互いが将来結婚する約束をしていたといえるか判断されるのが通常です。
ちなみに、「慰謝料はいらないけど約束通り結婚してほしい」と思う場合もあるかもしれませんが、婚姻はお互いの自由な意思に基づいてされるものなので、残念ながら強制執行等によって裁判所が無理やり結婚させることはできません。
婚約破棄の理由や事情によって変わってきますので、いわゆる相場はありません。裁判では、数十万円~百万円程度のことも多いですが、交際期間が長い、婚姻適齢期が過ぎた、年齢や健康状態、妊娠中絶がある、破棄された側に落ち度がない等の悪質なケースでは高額になる傾向があり、二百万円以上が認められたケースもあります。
どんなにツラい恋をしたとしても、法律で解決するのは難しいことがあります。簡単なことではないかもしれませんが、とことん落ち込んでから、少しずつ現実を受け止めるようにしてみてはいかがでしょうか。きっと、悲しい過去を振り返ることに時間を費やすより、素敵な明るい未来を目指して前を向いて生きていくほうが、自分の幸せに繋がるはずですよ。
(正木裕美 弁護士/アディーレ法律事務所)
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