ヒトメボ

カラオケ評論家

唯野奈津実

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 友達とのカラオケでは好きな曲を歌えばいいけど、合コンや仕事絡みのメンバーとなると場の空気を気にしてしまうもの。そこまで親しくないメンバーでのカラオケでは、何を歌ったらよいのでしょうか? カラオケ評論家の唯野奈津実さんに教えてもらいました。

1曲目(1巡目)はミディアム・バラード

「あまり親しくない間柄でのカラオケでは、1曲目は自己紹介のようなもの。選曲は十分に気に掛けたいところです。最初に選ぶ曲によって、『この人はこういうタイプの曲を歌う人なんだ』というイメージが刷り込まれます。“探り合い”的要素もあるので、あまり1曲目から冒険しないほうがよいですね」(唯野さん)

 具体的にどんな曲を選んだらいいでしょうか?

「ミディアム・バラードが無難かと思います。例えば、AKB48の『ヘビーローテーション』やコブクロの『桜』など、激しすぎずスローでもない、程よいリズム感の曲が良いですね。逆に、最初から変に盛り上げようとしてアップテンポでノリのいい曲を選ぶと、かえって滑ってしまう可能性があるので、場が少し温まってからのほうが良いでしょう。ただし、自分を宴会部長キャラとして売りたいのであれば、最初から派手に盛り上げるのもアリです」(同)

 たしかに、のっけからアップテンポでは戸惑う人もいるかも…。ミディアム・バラードのレパートリーが豊富にある人には朗報ですね。では、2曲目(2巡目)の選曲で気をつけるべきことは?

2曲目(2巡目)は「年代」か「ジャンル」を合わせる

「2曲目は、1巡目に他のメンバーの選んだ曲をヒントに、たとえば“年代を合わせる”、“ジャンルを合わせる”など関連性を持たせて選ぶと、メンバー間でスムーズに曲が繋がります」(同)

 同じ歌手にしないまでもどこか関連を持たせることで、前の人を受けたことになり次の人へのパスにもなります。平安時代の連歌っぽく皆で場を作り上げていくわけですね。さて、2巡もすればそろそろ場も温まってくると思いますが、そうなったら何を意識したらよいですか?

中盤では「この曲何だっけ?」と思わせる

「そろそろ自由に歌っても良い頃ですが、注目を集めたいのであれば、ある程度知られている曲を選ぶと良いです。とはいえ、ガチな国民的ヒット曲よりも、少し前に流行ったドラマやCMのタイアップ曲を選ぶほうが、『あ、この歌聴いたことがある』『この曲何だっけ?』と考えさせられる分、より注目を集めやすいです。例えば、レミオロメンの『3月9日』やいきものがかりの『花は桜 君は美し』あたりの曲ですね。逆に、好みの分かれるジャンルの曲(ボカロ・アニソンなど)は避けたほうが無難です。特にボカロやアニソンは、『マニア』『オタク』というイメージが未だ根強いので、そうしたイメージを持たれたくなければ、知らない間柄の中で選ぶのは控えたほうがいいですね」(同)

 有名なアニソンならそうしたリスクは少ないのでは?

「アニメは男女や世代によっても嗜好が異なります。同性だけ、同世代だけのカラオケであればもう少し条件は緩むかもしれませんが、それでも“親しくないメンバーで行くカラオケ”では、たとえ『創聖のアクエリオン』(AKINO)や『宇宙戦艦ヤマト』(ささきいさお)などのカラオケ定番曲のイメージがあるアニソンであっても、やはり選曲を控えたほうが無難です」(同)

 なるほど。とはいえ、せっかくカラオケに来たのならどこかで得意曲を披露したり好きな曲を歌いたいものですが…。

“歌うま”アピールはほどほどに

「もちろん、ある程度は自分の好みに走ったほうがカラオケを楽しめるというもの。もしもマイナーな曲が好みなのであれば、イントロなどのタイミングで軽く説明しておくと良いでしょう。『私、実はこのアーティスト好きなの』、『この曲、知らないと思うけど歌詞がすっごくいいから歌詞を見てて』、『この曲の映像、面白いよ』などと話しておけば、興味を持って聴いてもらえると思います。また、カラオケ上級者の場合、例えばAIの『Story』、Superflyの『タマシイレボリューション』などといった、歌唱力をアピールしすぎる選曲はあえて控えましょう。上手すぎても逆に引かれます」(同)

 『歌うまいね』と言わなきゃいけないような無言の圧力を感じること、たまにありますよね…。マイクを持つと人格が変わる人がいますが、心当たりある人は気をつけたほうがいいかもしれません。では、“締め”の曲選びの心得は?

みんなが知っている有名曲でフィニッシュ!

「大トリでなければ特に気にする必要はありません。もし自分が大トリであれば、誰もが知っている有名曲を選ぶほうがスッキリ締まります。ある程度打ち解けていれば、あえて最後に、ゴールデンボンバーの『女々しくて』やAKB48の『フライングゲット』などの、ノリの良い定番曲を持ってきても良いですね。程よい余韻が残ります。熱唱系のバラードは『締まらない』ので避けたほうがいいでしょう。歌っている本人は気持ちよくても、他の人は不完全燃焼になってしまいます」(同)

 親しくないメンバーでのカラオケは、いつもとはちょっとだけ目線を変えて臨んだほうがいいかもしれません。空気を読んだ曲選びで楽しく盛り上がれたら、より良好な関係を築けそう。それはそれで乙なものですよね。

(坂井あやの/verb)
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ライター

坂井あやの

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