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2019.05.28
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最近では、宇宙人というと「グレイ」タイプが一般的になっています。灰色の小さな体で、頭は異常に大きく、アーモンド型の大きな瞳、小さな鼻と口を持ち、手足はひょろ長いというのが「グレイ」の特徴です。では、なぜ宇宙人といえば「グレイ」タイプなのでしょうか? 今回は「グレイ」タイプの宇宙人について、しばしば日本最強のデバンカーといわれる皆神龍太郎先生に聞いてみました。
※「デバンカー(debunker)」とは、超常現象やオカルトを懐疑的に扱い、科学的に検証しようとする人のことです。
――昔はタコ型宇宙人など、いろいろな宇宙人が想像されていましたが、現在では宇宙人というと「グレイ」タイプに統一されているようですね。
皆神先生 そうですね。タコ型だけでなく、BEM(bug-eyed monster)といわれる宇宙人(あるいは宇宙怪物)なども有名でしたね。この手の宇宙人は、初期のSF小説に添えられる挿絵に登場したために有名になったのでしょう。例えば、アメリカのSF雑誌『アメージング・ストーリーズ』※1の表紙絵などの影響もあると思います。
――かつてはいろいろな外見の宇宙人も目撃されていたようですが。
皆神先生 アダムスキーが会ったと主張した「地球人と寸分変わらない宇宙人」(1952年)もいましたし、フラットウッズ・モンスター(1952年)のように「身長3メートルで仏像のような光背を持ち、臭い息をシューシューと吐く宇宙人」など、さまざまな宇宙人がいたものです。
――「グレイ」タイプの宇宙人にはオリジナルがあるのでしょうか?
皆神先生 「グレイ」タイプの宇宙人がどこからきたかには諸説あります。スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』(1968年)以降であるといわれたり、スティーブン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』(1977年/日本公開は1978年)に登場する宇宙人が原型になっているといわれたりします。
「グレイ」は、色が灰色で頭部が異様に大きく、手足が細く小さい、まるで胎児のような姿ですよね。『2001年宇宙の旅』には「スターチャイルド」という胎児のような見た目の「存在」が登場します。これがオリジナルのひとつではないのかというわけです。
また『未知との遭遇』のラストでは、頭が大きく、手足の細長い宇宙人が登場し、主人公を宇宙船に招き入れますね。宇宙人=「グレイ」タイプというイメージが世界の人々に広まったのは、この『未知との遭遇』の影響が大きいといわれています。
そもそも『未知との遭遇』で「グレイ」タイプの宇宙人が採用されたのは、宇宙人による誘拐事件の元祖といわれる「ヒル夫妻誘拐事件」※2の影響によるものです。ややこしいのですが、「ヒル夫妻誘拐事件」に現れた宇宙人にはさらに「モデル」があったといわれています。
――どういうことでしょうか。
皆神先生 ヒル夫妻は、宇宙人は大きな目をしていたと証言していますが、これはSFアンソロジーシリーズ『アウターリミッツ』に登場するエイリアンがモデルなのでは?というのです。
――なぜ分かるのですか?
皆神先生 彼らが逆行催眠をかけられて証言した2週間前、『アウターリミッツ』で放送されたエピソード「宇宙へのかけ橋」に登場するエイリアンがまさにそのような見た目だったことが分かったのです。また、形状だけではなく、テレパシーで話すといった特徴も似通っていました。ヒル夫妻は逆行催眠にかけられ、同番組に登場したエイリアンに影響を受けて話をしたのではないか、というわけです。
――真実はどうだったのですか?
皆神先生 ヒル夫妻はこの番組を見ていないと主張していますが、真偽は分かりません。しかし、この『アウターリミッツ』に登場するエイリアンが「グレイ」の原型にふさわしい見た目※3であることは確かです。興味のある人は画像を検索してみてください。
――ヒル夫妻が逆行催眠によって思い出したことは本当のことなのでしょうか?
皆神先生 逆行催眠では、自分が経験していないことでも、あたかも経験したかのように思い出したりします。また、催眠状態のときに暗示によってニセの記憶を受け付けることも可能です。ですから、逆行催眠によって「思い出した」とされる記憶は全く信用できません。そもそもヒル夫妻に逆行催眠をかけた医師自体が夫妻の証言を全く信じてはいませんでした。
――「グレイ」の話に戻ります。未来人は、頭が大きく発達し、運動をしないため手足が退化して細長くなる、なんていわれますが、この未来人のイメージは「グレイ」の外見に影響していると思われますか? UFOには未来から来た地球人が乗っているんだ、みたいな説もあります。
皆神先生 うーん……あんまり関係ないと思いますよ。
※1
『Amazing Stories(アメージング・ストーリーズ)』は、1926年創刊のアメリカ初のSF専門誌。
※2
アメリカ初のUFOによる誘拐事件(アブダクティー)といわれている。1961年9月19日、ポーツマスの自宅へ戻るためクルマを走らせていたバーニー・ヒル、ベティ・ヒル夫妻は、UFOに遭遇。UFOによって誘拐され、その記憶も消された。夫妻は後に逆行催眠で「宇宙人によって検査されたこと」を思い出した――とされる。
※3
⇒参考:英語版Wikipedia「Barney and Betty Hill」(「宇宙へのかけ橋」に登場する宇宙人の画像があります)
https://en.wikipedia.org/wiki/Barney_and_Betty_Hill
――では、なぜ「グレイ」タイプの宇宙人が一般的になったのでしょうか?
皆神先生 テレビで最初に「グレイ」タイプの宇宙人が創作され、それに影響されて「グレイ」による誘拐を経験したという人が現れ、その話によってさらに「グレイ」タイプ宇宙人の映画が作られるという形で、メディアとUFO神話の間でのグレイの循環再生産が起きているのです。
「ロズウェル事件」でも、事件発生時にはそんな話は全くなかったのに、後になってから「子供のような宇宙人の遺体を回収した」なんて話が出ましたし、「宇宙人解剖フィルム」(1995年)でも宇宙人は「グレイ」タイプになっていました。世界的にヒットしたSFドラマ『X-ファイル』(1993年-2002年)でも、宇宙人は「グレイ」タイプでしたね。
映画やドラマなどでイメージが強調されたために「宇宙人=グレイ」が根付いたのだと思われます。何年か前に中国でも「グレイ」タイプの宇宙人が目撃されていますし、これは世界から多様性が失われている証拠なのかもしれませんね。
――ありがとうございました。
最近は、宇宙人というと「グレイ」タイプと相場が決まっていますが、オリジナルについては諸説あるとのこと。ただ、宇宙人に「グレイ」タイプのイメージが定着したのは、多くの映画やドラマなどで「グレイ」タイプの宇宙人が描かれたためのようです。皆神先生のおっしゃるとおり、これは宇宙人のイメージのグローバル化といえるのかもしれません。だとすれば、世界が狭くなったためともいえるわけで、ちょっとイヤな感じもしますよね。
(高橋モータース@dcp)
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