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2019.02.09
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学習帳のシェアナンバーワンを誇るのがショウワノートの「ジャポニカ学習帳」です。小学生の頃に使っていたという人も多いでしょう。では、この「ジャポニカ」とは何のことなのか、皆さんはご存じですか? またジャポニカ学習帳といえば、昆虫の写真の表紙が印象的ですが、なぜ昆虫の写真を使うようになったのかご存じでしょうか? 今回は、ショウワノート株式会社開発部の小原崇さんに、ジャポニカ学習帳についてお話を伺いました。
――「ジャポニカ学習帳」が誕生した経緯を教えてください。
小原さん ジャポニカ学習帳が誕生したのは1970年です。元々弊社は富山県で封筒や便せんを作っていた会社でしたが、東京進出の際にこれまでと違ったことをしてみようと「学習帳」に注目したのがきっかけです。
――当時の「学習帳業界」はどうなっていたのですか?
小原さん すでに20社ほどのメーカーから学習帳が発売されていて、当時は「子どものイラスト」が表紙になっている学習帳が主流でした。弊社もその形の学習帳を作ったのですが、やはり他社と似たものになってしまい、業界としては最後発だったので全く売れませんでした。
――厳しい船出だったのですね。
小原さん そこで他とは違うこと……と考えたのが、当時小学館さんから発売されていた『JAPONICA(ジャポニカ)』というカラー百科事典とのコラボレーションです。百科事典のコンテンツの一部をお借りして、普通のノートよりも「高品質な良いノート」を作りました。こうして生まれたのが『ジャポニカ学習帳』です。
――なるほど。「ジャポニカ」は小学館の百科事典の名前だったのですか。もし百科事典の名前が別のものだったら、ジャポニカ学習帳にはならなかったのですね。
小原さん 「ヨーロピアン」だったら「ヨーロピアン学習帳」になっていたかもしれません(笑)。
――ジャポニカ学習帳といえば写真を使った表紙ですが、当初からこのコンセプトだったのですか?
小原さん 当初からカラー写真を使用しています。最初のラインアップは「ひまわり」「魚」「リス」などでした。
――アラサー、アラフォー世代だと「昆虫の写真」が表紙に使われていたイメージが強いのですが、なぜ昆虫の写真を多く用いるようになったのでしょうか?
小原さん スタートから何年間は、百科事典のカラー写真をそのまま使用していましたが、その後オリジナルの世界中の自然を表紙写真にしよう、ということになりました。その際に起用した山口進さんというカメラマンが、花や蝶などの昆虫をテーマに写真を撮影していたのがきっかけです。
――そうした背景があったのですね。
小原さん 山口さんには、1973年から現在までずっとジャポニカ学習帳の表紙写真の撮影をお願いしております。表紙のパターンは1,000以上ありますから、それだけ多くの表紙用写真を撮影してこられたということです。ギネス記録なのではないでしょうか。
――どんな写真が多いのですか?
小原さん 比率でいえば「花」が一番多いです。昆虫は花ほど多くはないと思います。
――昆虫の写真の中には子どもたちが驚いたものもあると思いますが、反響が大きかったのはどんな昆虫の表紙ですか?
小原さん 皆さんが学習帳を買うときは表紙写真はあまり意識しないので、当時どんな写真が驚かれたのかは分からないですね。ただ、私個人としては「ヨコバイ」の写真は、かなり「激しいな」と思いました。
――確かにこの表紙はなかなか「激しい」ですね。反対に人気があった昆虫の表紙は何でしたか?
小原さん 2015年にジャポニカ学習帳45周年記念企画として、歴代ジャポニカ学習帳の人気投票を行ったことがありました。その際、1970年代、1980年代などと年代ごとに投票をまとめてランキングを作ったのですが、全て昆虫でした。やはり皆さん昆虫の写真が印象に残っているようです。
――「クレームがあった」ことで、昆虫の表紙が消えてしまったと耳にしたことがあるのですが、それは本当なのでしょうか?
小原さん 実際は弊社が行っている学校向けサービスとの兼ね合いで、2012年から昆虫から花の表紙をメインにするようになりました。最近は、小学校の先生が新学期に受け持ったクラスの生徒たちに、授業で必要なノートを配ることが多くなっています。生徒各自でそろえた場合、特に低学年だとノートによってサイズやマス目の数が異なります。授業をスムーズに始めるためにもノートをそろえて配布した方がいい、というわけなのです。その際、ノートを買いそろえるのを弊社でお手伝いしています。
――そのサービスと虫の表紙がなくなったこととは、どのような関係があるのですか?
小原さん ノートの「中身」の種類は50種以上と非常に多いのですが、表紙は一つの種類につき1パターンです。例えば小学2年生の17マスの算数ノートの表紙はアサガオ、小学3年生の国語のノートはヒマワリといったふうになっています。その一つしか選べないノートがもし昆虫の表紙だった場合、生徒たちの中には必ず「虫の表紙は嫌だ」という子どもが出てきます。
――男の子ならいいかもしれませんが、女の子だと苦手な子も多そうですよね。
小原さん はい。それを踏まえると、先生もそのノートを選びませんから、企業としては機会損失となってしまいます。そうならないように、嫌う人の少ない花の写真にシフトしていったのです。それともう一つ、たまたまその年(2012年)に昆虫の写真があまり撮影できなかったのも、昆虫から花の表紙に切り替わっていった理由です。
――今後の展望を教えてください。
小原さん ジャポニカ学習帳は2020年に50周年を迎えます。発売以来、「百科事典のコンテンツが学習ノートでも楽しめる」というコンセプトを続けてきましたが、50周年を迎えるタイミングでのリニューアルを検討しています。具体的には、山口進先生が表紙写真をどのように撮影されたのかなど、ジャポニカ学習帳の顔である表紙撮影の裏側を盛り込む予定です。
――より「写真」にフォーカスした内容になるのですね。
小原さん はい。前半は、撮影時の生の体験を基にさまざまななものに興味を持ってもらうきっかけを促す記事です。後半は、前半の記事から派生する一般的な情報へと話をつなげています。子どもたちが、そこを入り口に自然について学んだり、自分なりの「気づき」につなげてもらったりしてくれるとうれしいです。
――リニューアルを楽しみにしています。ありがとうございました。
ジャポニカ学習帳の「ジャポニカ」は、小学館の百科事典の名前が由来とのことでした。また、写真家の山口進さんが花や昆虫の写真を得意とするカメラマンであったことから、個性的な昆虫の写真が表紙を飾ることとなり、それが当時の子どもたちに強い印象を残したようです。私たちが何気なく使っていたノートには、こうした裏話があったのです。
ちなみに2020年に50周年を迎えるジャポニカ学習帳は、これまでに「13億冊以上」を販売したそうです。皆さんが使った1冊も、この中に含まれているでしょう。また、最近は「大人用」のジャポニカ学習帳も発売されています。おなじみの表紙フォーマットなので、懐かしい気分になること間違いなし。機会があれば手に取ってみてはいかがですか?
取材協力:ショウワノート株式会社
(中田ボンベ@dcp)
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