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2015.06.19
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2015.06.19
恋する二人は、時に我を忘れてしまうもの。つい気持ちが盛り上がり、人目のある場所で濃厚なラブシーンを演じてしまったり、過激な写真を送りあったり……。しかし、そんな行動が「犯罪」になってしまうこともあるようです。
そこで、法律から見た『わいせつ』のボーダーラインを、島田さくら弁護士(弁護士法人アディーレ法律事務所所属)にお聞きしました。
「恋人と二人だけでラブシーンを演じる分には問題ありませんが、これを誰かに見られたりした場合には、『公然わいせつの罪』(刑法174条)に問われることがあります。これは、その名のとおり『公然と』『わいせつな行為』としたといえる場合に問われる罪です」(弁護士・島田さん)
『公然』『わいせつ』とは具体的に何を指すのでしょう?
「『公然』とは行為を不特定または多数人が認識できる状態のこと。不特定の人が見ることができる状態にした場合には、実際に見たのが少数だったとしてもこれにあたってしまいます」(同)
多くの人に見られる可能性があったかどうかが問題で、実際にどうであったかではないんですね。人気のない公園や閲覧者のいないブログなども『公然』ということですね。
「次に『わいせつ』についてですが、何が『わいせつ』にあたるかは、その時々の社会の常識によって基準が変わってきます。一般には、『徒(いたずら)に性慾(せいよく)を興奮又は刺激せしめ且つ(かつ)普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道義観念に反するもの』という判例による基準があります」(同)
普通人の正常な性的羞恥心を害し…? ちょっとよく分からないのですが…。
「これは『無駄に性的で一般人が見て恥ずかしくなるような不道徳的なもの』という程度の意味で、その時代の国民の道徳的な感性によって左右されてしまう基準です。たとえばキスの捉え方も、昔と今では違いますよね」(同)
なるほど、時代とともに変わっているんですね。でも今の時代とはいえ、さすがに裸はダメですよね?
「裸になっただけで『わいせつ』といえるかは、場合によると思いますが、さすがに、性器を露出したような場合には『わいせつ』にあたるでしょう。セックスなどはもちろん該当しますよ。また、公然わいせつ罪が『非親告罪』(被害者などの告訴がなくても起訴できる犯罪)であることにも注意が必要です。ストリップショーの観客のように、裸を見せる相手が同意していたとしても、犯罪として訴追されるおそれがあるのです」(同)
とにかく公然でやるな、ということですね。また、場合によっては、「もっと重い『わいせつ物陳列罪』(刑法175条)に問われるおそれもある」とのこと。
「公然わいせつ罪は、わいせつな行為を問題視するものですが、『わいせつ物陳列罪』はわいせつな物に着目した犯罪。たとえば裸を撮影した画像や動画などを見せる行為は、こちらのわいせつ物陳列罪にあたる可能性があるのです」(同)
実際に見せる(見られる)行為よりも画像や動画を見せる(見られる)ほうが罪は重いんですか?
「わいせつ物陳列罪のほうの法定刑が重いのは確かです。これは、一般的にみて、『物』になっている場合には拡散のおそれが増すので、一回きり、その場で終わる『行為』よりも悪質だという判断に基づいています。もちろん実際の量刑はその事件により異なりますので、公然わいせつ罪にあたる行為のほうが重い刑を言い渡されるというケースだってありますよ」(同)
どこまで重い刑を科せるかという上限ではわいせつ物陳列罪のほうが重いのですが、かといって画像や動画で見せるほうが絶対に重い刑になるかというと、そういうわけでもないようです。では、どこで何を見せると違法になる可能性があるかというと…
それでは、ケース別に罪に問われる『わいせつ』のボーダーラインを考えてみましょう。
「男性が上半身を露出してもわいせつだとは言われないでしょう。また、女性が乳房を露出した場合にも、公然わいせつ罪は成立しないという考えが一般的です」(同)
「たとえ自宅の敷地内というプライベートな空間でも、外から見える場合には公然性が認められる可能性があります。他の人から見えるなら、そこでわいせつ行為をすれば公然わいせつ罪に問われる可能性はあります」(同)
「人通りが少ないとはいえ、公園や道路は公共の場所ですし、実際に人が通りかかっているので、公然わいせつ罪が成立する可能性は十分にあります。ただ、人が通行する可能性がほとんどないような場所であれば、公然性を争うことはできるでしょう」(同)
「インターネット上にわいせつな画像をアップする場合には、『わいせつな図画』を『公然と陳列』したといえるので、より重い罪であるわいせつ物陳列罪に当たる可能性があります。インターネットは不特定多数の目に触れる可能性があるので、公然性が肯定されます。ただし、たとえば知人数人だけが閲覧できるような制限のあるブログの場合には、公然性を争う余地があるでしょう」(同)
「メールの場合、通常は一対一のものなので公然性がなく、罪になるケースはあまりないでしょう。ただ、大勢の人に送信するような場合には問題になります」(同)
それでは、ボーダーラインを越えてしまい「違法行為」が明らかになったら、いったいどうなってしまうのでしょう。
「逮捕や起訴をされる可能性がありますね。もし検察に起訴されてしまった場合、裁判になります」(同)
さらに有罪となったらどんな罰則が待っているのでしょうか?
「もし有罪となったら、実刑判決のおそれもないわけではありません。刑法上、公然わいせつ罪の法定刑は『6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料』、わいせつ物陳列罪のときは『2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金、もしくは科料に処し、または懲役および罰金を併科する』とされています」(同)
もっとも、すべてのケースが刑事事件になるわけではなく、実際に逮捕されたり裁判になったりするケースはごく一部のよう。警察のほうでも、なかなか全てに目を配るのは難しいということでしょう。
とはいえ、軽い気持ちでしたことが、予想もしないような重い結果につながる可能性だってあります。特に、ネット関連の事件はまだ扱いが確立しておらず、今まで有罪になったケースがないからといって油断はできないとか。恋愛の火遊びで大やけどしないためにも、ラブシーンは法律の範囲内で演じたいものですね。
(森田公子/サイドランチ)初出 2014/4/12
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