ヒトメボ

作家・医師

米山公啓

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読了時間:約3分

 何年経っても仲良しの夫婦って、見ていて本当に温かい気持ちになるもの♪ ところで、こうした長年連れ添った夫婦は、よく「顔が似てくる」なんてことを言いません? でも考えてみたら、血がつながっているわけでもないのに顔が似てくるなんて、ちょっと不思議。

 そこで、さっそく調査をしてみると、なんとも怪しいこんな一説を発見! なんでも、「キスによって“ニューロペプチド”という神経伝達物質が相手に伝わり、その時に“記憶”も一緒に伝達しているため、お互いの顔が似る」とのこと…! でも本当にこんなことってありえるの!?

「残念ですが、これには全く根拠はありません」

 とは、分子認知科学を研究している東京大学大学院教授の石浦章一さん。石浦さんいわく、毎日同じ食事をしている夫婦が同じような体型になったり、それ故に同じ服装をするようになったりということはあっても、顔については根拠がないとのこと…。また、大脳生理学的に見た恋愛論を研究している作家で医学博士の米山公啓さんも、

「“キスで記憶を伝達”は全くの都市伝説でしょう。科学的にあり得ません。記憶の伝達がそんなことで起こったら何かを覚えるのがすごく楽になりますが、無理というものです」

 と、“キス説”を完全否定! たしかにこれが本当だったら、「彼氏の元カノと自分がだんだん似てきた…」なんて世にも奇妙な事件になりかねないですもんね(笑)。

 そんな中、またもや新たなウワサを入手。それは「一緒にいるうちに相手の表情やクセがうつり、顔の表情筋が似たような作りになっていくから」というもの。一体、この“夫婦が似る謎”の真相はどこにあるのでしょう!?

「“顔が似る”というのは、喜怒哀楽の表情の変化が同じようになることであって、顔の作りそのものが似ることではないでしょう。お互いの感覚が似てくるから反応も同じになり、似たもの夫婦になるのです。同じところで笑い、怒る。このことを『顔が似てきた』と思うのです」(米山さん)

 なるほど! 根本的に顔が変わるということではなく、“同じ表情をするようになる”ということだったんですね。でも、どうして一緒にいるだけで喜怒哀楽の感情が同じになっていくの?

「脳には“ミラー細胞”という神経細胞があって、相手の行動や動作を見るだけで、同じ感覚を自分の脳の中に作ることができるのです。友達が転んだ姿を見て、自分も『痛い』と思うのはこのため。そして、このミラー細胞を興奮させる働きをするのが、恋愛です。相手の表情や行動から相手の経験を共有するためには、恋愛のように本気で相手を理解しようとする気持ちが大きな原動力になるのです。夫婦はこうしてお互いの経験を共有していき、次第に同じような価値判断、感覚になり、顔の表情も似てくるのです」(同)

 本気でお互いを理解しようと思えるのも、長年連れ添った夫婦だからこそですよね。それにしても、怪しいウワサの真相が分かってすっきりしました♪ みなさんも周りから「なんか二人最近似てきたね」と言われるようになったら、もしかすると真のお似合いカップルになってきた証拠なのかも!? ぜひとも、おじいちゃんおばあちゃんになっても同じ顔で笑い合っている夫婦を目指してくださいね!

(池田香織/verb)
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ライター

池田香織

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