呼吸の乱れは気持ちの乱れ！ 痴話ゲンカを回避する「呼吸法」とは？

　些細なことでも恋人とぶつかってしまうのはよくあることですが、呼吸を改善することで、ケンカを回避する方法があるそうです。一体どういうことでしょうか？ ボイス＆メンタルトレーニングスクール「アマートムジカ」校長の司拓也さんにお聞きしました。

呼吸の乱れから感情の乱れをキャッチする

「焦る、怒る、不安になるなど感情が乱れたり、ケンカのときはだいたい呼吸が浅く速くなっています。呼吸からSOSの状態をキャッチできれば、自分で『今、呼吸がおかしいから落ち着かなくちゃ』と分かるのです」（同）

　確かに私たちも普段、慌てている人に「深呼吸して」などと声をかけたりしますよね。

「焦ったり怒ったりすると声は上ずってしまいます。冷静さがないと思いやりや優しさも持てません。呼吸は声にも影響しますが、信頼できる人、いいなと思うような人は呼吸が安定しています。常に穏やかで、気分で一喜一憂しない人はモテますね」（司さん）

　そうはいっても、なかなか自分の呼吸の状態には気づけないもの。意識していれば、誰でも気づけるようになるのでしょうか。

冷静さを取り戻す！ ”丹田呼吸法”

「『丹田呼吸法』を毎日行っている人は、自分の呼吸をみる癖がつきます。自分の呼吸の状態に気がつきやすくなり、逆に呼吸を整えて自分で自分を冷静にすることができます。１日１回、朝でも夜でもいいのでこの呼吸法をやってみて、自分と向き合う時間をつくるといいですよ」（同）

＊丹田呼吸法＊（１回約40秒）

1. 15秒かけて息を吸う。

2. 15秒止める。

3. 10秒かけて吐く。

「足の裏から息を吸って、背骨を通って頭のてっぺんまでいったら、その息を止めながらおなかの丹田（おへその約９cm下あたり）まで下ろす様子をイメージしてください。丹田までいったら息をハーッと吐きましょう。15秒間息を吸って、などとあまり堅苦しく考えず、体の状態を感じながら呼吸することが大事です」（同）

　また、きちんとした呼吸は、発声の前段階としてもとても重要なポイントなのだとか。

「感情が乱れていると、呼吸が浅く速くなるので、ノドもしまって声がよく出なくなります。自分の言うことも伝えにくいし、エキサイトしていると相手の雰囲気や何を考えているのかをキャッチすることもできません」（同）

　たしかに、早口だと「○○と言ってるでしょ」という一言であっても、とてもキツく聞こえるもの。そこで、今度はノドを開いた発声がケンカ回避に大事になってくるのです。

ノドを開く！“びっくりスローモーション”

「呼吸がちゃんとできて、ノドを開けて話せるようになる “びっくりスローモーション”という方法があります。びっくりしたときは一瞬息を吸いますが、その動作がノドを開く動きと一緒なのです。ノドの奥に冷たい息が当たり、ノドが開く動きをスローモーションで行う、つまり一瞬ではなくゆっくりと “ビックリ”の動作をして吸った息を、止めずにそのままハーッと吐き出します。

そのときに、ため息のように “ハァー”と声を出すと、ノドが開いた状態を保つことができます。ノドが開かないと声が出にくい状態になるので、ノドが開いたまま息を吸って吐き出す感覚を知ってください」（同）

　これを行うと声を出しやすくなり、穏やかな声にしようと間を取ることもでき、ノドがしまったままの威圧的な声にならずに済みます。

「違う人間である」ことを互いに知っておく

　呼吸法やノドを開くことでケンカは回避しやすくなりますが、そもそも「相手と自分は違う人間」ということをきちんと理解しておくことが大事だと司さんは言います。

「自分の思いが100％伝わると考えていると、違いが起こるたびにどんどん減点していき、印象が悪くなります。しかし、伝わらないことが当たり前だと思っていれば、通じ合うたびに相手に対する印象を加算していくことができます。お互いの異なる概念も認めやすくなるし、分かってもらえた喜びも大きくなります」（司さん）

　ケンカになりそうなときには、「私の言うことがなんでわかんないの！」ではなく、“丹田呼吸法”で冷静さを取り戻し、“びっくりスローモーション”で穏やかな表情と声で自分の思いを伝えれば、ヒートアップせずに相手と分かりあえるというわけです。いろいろ応用できそうですね。

(東野由美子/サイドランチ)

初出 2013/11/14