ヒトメボ

日本大学法学部新聞学科准教授

小林義寛

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読了時間:約6分

「あんたのことなんか、好きじゃないんだからね!」

 最近ではだいぶメジャーになった「ツンデレ」という単語。一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。聞いたことはなくとも、いつもはトゲのあるツンツンした態度をとるあの娘が不意に見せる照れ顔にときめいた経験は? 今回は日本大学法学部新聞学科の教授・小林義寛さんに、ツンデレやそこから派生した○○デレについてお話を伺いました。

「ツンデレ」のルーツとは?

「『ツンデレ』という言葉は、小池一雄原作の漫画作品『高校生無頓挫』(1971年−1973年)の中のセリフが起源だとか、ジャンプで連載していた『きまぐれオレンジ☆ロード』(1984年−1987年)のヒロイン、鮎川まどかのキャラが原点だとか、諸説ありますね。とはいえ、実際にその言葉が使われたのは2001年に発売された18禁恋愛アドベンチャーゲーム『君が望む永遠』に登場するヒロインのひとり、大空寺あゆでしょう。さかのぼれば同様のキャラはいくらでもいますが、このキャラ以降、急速に『ツンデレ』という言葉が広がっていきました」(小林義寛さん)

 ツンデレという言葉は知っていても、18禁の恋愛ゲームから広まったとは知らなかった人も多いのではないでしょうか。また、派生系として様々な「○○デレ」も誕生しているようです。その奥深いギャップデレの世界をご紹介していきましょう。

王道「ツンデレ」

 普段の接し方にはトゲがあるが、ふとしたときに甘えてくるタイプ。18禁恋愛アドベンチャーゲーム『君が望む永遠』の大空寺あゆについて、インターネット上で「ツンツンデレデレが良い」と書き込みされたことがきっかけと言われる。

【特徴】

好きな人の前では素直になれず、ついつい悪態をついてしまう。悪態をついてしまった後で人知れず凹むことも。

可愛げがないと思われつつも、まれに照れるはにかむ甘えるなどの行動が見える。

本心を隠そうとして核心を言ってしまう「~じゃないんだからね!」と言ってしまう。

【セリフ例】

「あんたのことなんか、好きじゃないんだからね!」

「バカじゃないの! ……そういうとことが好き…、なんだけど」

「勘違いしないでよ! 別に深い意味とか…ないし」

冷静なようで冷静じゃない?「クーデレ」

 普段は冷静で無口、表情もあまり動かないが、ふとした拍子に情熱的な一面をのぞかせるタイプ。「クールだけどデレデレ」から生まれた言葉。

【特徴】

クールな表情のままさらりと大胆なことを言う。

基本的に笑うなどのやわらかい表情を見せることがないので、まれに見せる笑顔のインパクトは絶大。

【セリフ例】

「…大丈夫。あなたは私が守るから」

「怖いの? 私はあなたがいるから怖くないわ」

「変わったとすればあなたのせいですね。責任とってください。…ふふ、冗談です」

ちょっと怖い「ヤンデレ」

 精神的に「病んでいる」にもかかわらず、恋愛対象にデレデレするタイプ。狭義では、病的なほどに相手を愛するタイプ。「病んだ状態でデレデレ」してくるから生まれた言葉。

【特徴】

好きという感情が強すぎるため、二人の関係を守るためなら他の人へ危害を加えることも…。

少しでも他の女性の話をしようものなら大変な修羅場が待っている。

強烈な束縛に慣れると愛され必要とされているという充実感が生まれる。

【セリフ例】

「どこにも行く必要なんてないよ、私がいるじゃない」

「ず~~~~っと、死ぬまで一緒だよっ! …約束だから、ね?」

「頭のてっぺんから足のつま先まで、抜けた髪の一本から切った爪まで全部愛してるの」

すべてにおいてダルさが優先「ダルデレ」

 いつもはすべてにおいて面倒くさそうだが、好きな人には甘くなる。「(普段は)ダラダラしてるけど(好きな人には)デレデレ」から生まれた言葉。

【特徴】

干渉するのも干渉されるのも「面倒」というのが基本スタイル。

好きな人に対しては、案外付き合いがいいように見える。が、実際には文句を言うのもだるいだけということも…。

他のデレに比べて愛情の示し方や態度がゆるく、一般人も馴染みやすい。

【セリフ例】

「え~、面倒だからヤダよー。……もうしょうがないなあ、付き合ってあげる」

「ほんと何も変わんない毎日がいちばんですよ。きみも…まあ、隣にいることですし」

「ほほう、そんなに連れ出したいほど私のことが好きかね? じゃあ今日はふたりでお昼寝です」

デレの魅力を黄金比で楽しむ!

 他の人にも見せる通常時の姿と、自分だけに見せてくれるデレのギャップ。○○デレの魅力とはまさにこのギャップに隠されています。そのギャップはデレの比率が低いほど際立つものです。ツンデレを例に挙げるなら、ツンとデレの比率が「9:1」ではなかなかデレを見られないし、「6:4」では普通に毛が生えたようなものになってしまいます。

 そこで初心者におすすめしたいのは「7:3」。この黄金比で物足りなく思ったら自分好みの比率を探して、どんどん○○デレの世界を極めていくのがオススメです。

「○○デレ」に揺さぶられる男心

「冷たかったり、感情表現が薄いように見えたりしていた人が、ある瞬間に急に甘えてきたら、普通はちょっと戸惑いますよね。でも、その甘えや依頼心みたいなのが、実は好意から来ているものだったら、距離がぐっと縮まったことにこちらの気持ちも動きます。場合によっては、彼女たちの弱音とか悩みを知り、より一層助けてあげたいなんて思うこともあるでしょう。その上、○○デレの子たちは、一度好意を持つとそれが狭く深くなる傾向がありますから、強く愛されたい、誰かを支えたいと思う人が惹かれてしまうのかもしれません」(同)

 「(俺に)興味がないのかな」「嫌われているのかな」という態度をとる子が、実は素直になれないために誤解されているだけで、本当は自分のことが好き。「デレ」を向けられる側としても、普段の様子からはそんな些細なことで感情を動かすとも思えないのに、自分の行動で一喜一憂していることが分かると、普通に喜怒哀楽を表す子よりも「可愛く」感じられるというものです。

○○デレ攻略法は?

 視野を広く持って相手の良いところを見極め、それを分かっていることを普段の態度で示していくのがキーポイント。自分のことを分かってくれているという安心感がデレを引き出すのです。これは恋愛に限ったことではなく、人の本質を見ようとする姿勢は、誤解されやすい不器用な人からは特に好意的に受け止められることでしょう。

 世の中には今回ご紹介した意外にも様々なギャップデレがあります。あなた好みの新しい○○デレを探してみてください。それがツンデレに変わる次のスタンダードになるかもしれません。

(小林妙子)
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ライター

小林妙子

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