ヒトメボ

感性アナリスト・随筆家

黒川伊保子

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 先日、飲み会の席で繰り広げられた過去の「モテ自慢」大会。ここでとても興味深い出来事があったのです。それと言うのが、男性は「何人の人に告白されたか(肉体関係を持てたか)」など「量」を自慢することに対し、女性陣は「恋愛対象外の人からの告白は『モテ』にカウントしない。どんな男性にモテるかが大事」と反論してきたこと。つまり、男性は「量」を、女性は「質」を重要なモテ要素として考えているようなのですが、これって一般的にも言えること?

「その通りですね。これは互いに、そのほうが生殖に有利だからです。そもそも人間を含んだ哺乳類のメスは、生殖リスクが高いのが特徴です。妊娠準備から授乳までの間にヒトの場合は2〜3年をかけますし、自らの血液を分け与えて胎内で育て、出産後も母乳を与えます。妊娠と授乳期間は、自らの栄養を子どもに豊富に与えるわけですから、疾病リスクも上がります。こうして命がけで子育てをするのですから、生殖相手の遺伝子の質が高い男性1人に厳選せざるを得ないのです。

そのため、本能的に女性は、『複数の男子からモテて困る』という事態をあまり歓迎していません。これは、『決定打となる相手がいない証拠』であって、自慢できることではないからなのです」(感性アナリスト・黒川伊保子さん)

 なるほど! 恋愛対象外の男性は決定打にならないから、「ノーカウント」と判断するんですね。では、男性が「量」を重視する理由とは?

「哺乳類のオスの生殖にかける時間は、理論上は3分でも足りますし、多くの場合、生殖行為で命に危険が及ぶことはありません。こちらは『ばらまいたもん勝ち』で、『複数の女性と関係を持つ』ことは、自分の遺伝子を多く残せることにつながるので、男性の動物本能にとって好ましい事態。そのため自慢ポイントになるのです。つまり、いかに時間を掛けずに多くの女性に自分の遺伝子をばらまくかが、男性の動物本能として大切だからこそ『量』を重んじるのです。そして、その女性を口説き落とす『コスト』や『期間』が短ければ短いほど『効率的』ですから、そのことを男性は鼻にかけるのです」(同)

 でも、「量」は人数に置き換えることができますが、それに比べて「質」の定義はやや曖昧な印象。ここでの「質」とは、要するに「イケメンに限る」ってこと?

「女性の生殖相手選別は、単にルックスのよさで行われているわけではありません。最も重視するのは、生殖相性のよさです。そもそも動物というのは、自然と自分の持っていない『免疫抗体の型』を持っている相手に発情するようにできているのです。この情報は『体の相性のよさ』ということではなく、体臭の一部(フェロモン)に含まれており、皮膚や骨格、髪の生え方などにも顕れると言われています。女性は、こうした男性の匂いや皮膚の触った感じ、骨格や髪の見た目などから、相手を厳選しています。ほとんどの女性が『手を握ったら、この人とアリかナシか(生理的にムリか)が一発で分かる』と言いますよ。そして相手を吟味して、『一個体に照準を絞ったら一定期間は集中する』のです」(同)

 …その「一定期間」とは?

「ヒトの場合の一生殖期間は1~3年と言われています。その理由は、生殖可能性の低い相手(結婚、妊娠を認めてくれない男性)にいつまでも惚れていては、子孫繁栄の機会を逸するからです。1~3年を過ぎても結婚から妊娠へのステップに至らなかった場合、『恋の賞味期限』が切れて、相手にイライラしたり気持ちが冷めはじめたりするのです」(同)

 こうした動物的本能の違いが、男女の「モテの定義」が異なる理由だったんですね。そりゃ互いの主張も食い違うはずです。いやはや勉強になりました!

(冨手公嘉/verb)
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ライター

冨手公嘉

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