ヒトメボ

二松学舎大学文学部教授

江藤茂博

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 オタクと言えば男だけの世界! なんて思われていたのも今は昔。「電車男」が大流行し、秋葉原がオタクカルチャーの聖地として認識された頃とときを同じくして、「腐女子」や「オタ女子」なる言葉もしばしば耳にするように。しかし、言葉には聞き覚えがあっても、両者を同じものだと考えている人もまだまだ多いのでは? オタク文化に詳しい二松学舎大学文学部教授の江藤茂博先生にお話を伺いました。

腐女子はオタ女子の中の一要素!

「そのように勘違いしている人もいるようですが、違います。『腐女子』とは、マンガ、アニメ、ゲーム、小説などで、特に男性同士の性愛の物語=BL(ボーイズラブ)を楽しむ女性の俗称です。そうした物語群の愛好者が、自分たちのことを『腐っている』という意味で使い、やがて広まったとされるのが『腐女子』なのです。

一方『オタ女子』とはマンガ・アニメなどサブカルチャー領域とされるさまざまな文化に対して、歴史的な文脈や知識、そして収集などに個人的な情熱を向ける人たち=『オタク』の女性のことを言います。つまり、広い概念として、BLを含むサブカルチャー領域全体を好む人が『オタ女子』であり、『腐女子』は『オタ女子』の中の一要素に過ぎないのです。ですから、BL好き以外の『オタ女子』は『腐女子』に該当しないのです」(江藤先生)

 どうやら両者はきちんと分けて考えないといけないようです。では、「腐女子」はいつごろ誕生したのでしょうか?

腐女子の誕生

「『腐女子』の系譜は、70年代の少女マンガや雑誌『JUNE』にはじまります。80年代に入ると、男性同士の性愛について扱った『やおい』と言われる性表現やストーリーを展開する耽美小説、マンガなどの2次創作物が楽しまれるように。そして90年代中頃には、耽美小説がBL小説と名を変えて隆盛していき、腐女子なる言葉はその後の2000年以降に誕生したと考えられます。

また、2004年に映画化された嶽本野ばら原作(2002年10月刊行)の『下妻物語』の劇中で、『私、心根が腐っています』という深田恭子演じる桃子の台詞が登場します。このように、2000年代以降になって自分を『腐っている』と女性が自嘲することが受け入れられる文化になった頃に、『腐女子』と自認する人が増えたとも分析できます」(同)

 なるほど。自分や同じ趣味の仲間たちを自嘲して呼び合いはじめたことが、「腐女子」という言葉が生まれたきっかけだったんですね。ちなみに、「腐女子」や「オタ女子」を自認する人も、その女性たちに対する世間の印象も、ひと昔前に比べるとだいぶ変化したように思えます。

90年代前後生まれにはオタク文化に抵抗感がない!

「そもそもオタクの表現のルーツは、齢や所属学校の学年とは無関係な政治サークルやバイト仲間内での呼び名として、主婦らが使う『家』単位での相互呼称『お宅』をパロディカルに使用したもの。その微妙な距離感が、その後に趣味的な仲間内での相互呼称としてフィットして、さらにそこに、マンガ、アニメ、ゲームなどを愛する人の意味が加わり、80年代にカタカナ表記のオタクとして広まりました。

この頃からオタクな女子はもちろんいましたが、当時自らオタクと名乗っている女性はあまり見受けられませんでした。実際に『オタ女子』の言葉や概念が広まっていったのは、80年代のオタク文化に影響を受けた親御さん世代の子供である90年代前後生まれの女子たちが、この文化にあまり抵抗感を持たずに受け入れたために、自らを『オタ女子』と位置づけるようになったのです」(同)

 時代とともにオタクというものに対する偏見や抵抗感が薄れたことで、「オタ女子」や「腐女子」を自認し公言する女性が増えていったんですね。そこにはもう、かつての自虐や自嘲のニュアンスはないのかもしれません。勉強になりました!

(冨手公嘉/verb)
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ライター

冨手公嘉

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