ヒトメボ

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皆さんが子どものころ、食卓に並んだ料理にハエが付かないよう、カバーのようなものを掛けていませんでしたか? あれは「食卓カバー」「フードカバー」などと呼ばれるもの。料理を冷蔵庫に入れずに食卓の上にそのまま出しておきたいときなどに重宝します。昔は必ずといっていいほど家庭で見掛けましたが、最近はあまり見られませんね。そこで今回は、「食卓カバーの今」を調べてみました。

食卓カバーの歴史

日本では、古くから食品にハエがつかないように食べ物を収納する「蠅帳」(はえちょう、はいちょう)という家具が用いられてきました。食器棚のような形をしており、戸が網戸になっているため通気性がいいのが特徴。冷蔵庫が一般家庭に普及するまで広く使われていました。

生活様式が変わるにつれて家具タイプの蠅帳は使われなくなり、代わりに登場したのがメッシュや布を使用したコンパクトな「折りたたみタイプ」の蠅帳。つまり「食卓カバー」のことです。いつ登場したのかは明らかではありませんが、1960年代にはすでに発売されていました。50年以上の歴史を持つ商品なのです。

国内では1社のみが製造

現在も食卓カバーは販売されていますが、そのほとんどが国外で製造されたもの。実は食卓カバーを製造している国内メーカーは『タナカ株式会社』だけなのです。

タナカ株式会社の代表・田中源美さんにお話を伺ったところ、同社で食卓カバーの製造・販売を始めたのは昭和40年ごろ。実はタナカ株式会社は「蚊帳(かや)」の国内生産N0.1メーカー。住宅用やレジャー用などさまざまな蚊帳を製造・販売している総合メーカーなのです。自社に蚊帳用の布を製造する織物工場を持っていたことから、そこで生産される布を使って食卓カバーを作ったのだそうです。現在も昔と変わらないレトロなデザインの食卓カバーを製造しています。

さて、昔に比べてあまり見る機会が減った食卓カバーですが、最盛期には業界全体で年間400万本ほど売れていたとのこと。タナカ株式会社の製品はそのうち3分の1ほど、約100〜120万本ぐらいだったといいます。ただ、最近は安い海外製品が多く出回ったことで、昔ながらのしっかりとした作りのものが売れなくなっているそうです。

食卓カバーは妻・母の思いやり

田中さんによると、昔はハエが多かったので、単純に虫除けとして食卓カバーが使われていましたが、現在では用途が少し変わっているといいます。

というのも、現在は生活環境が変わってハエが少なくなったため、虫除けとして使う意味がなくなりました。現在では、とっさの来客時に卓上の調味料やつまようじなどの上にかぶせる「目隠し」として使われることが多いそうです。わざわざ食卓カバーを使わずに、冷蔵庫に入れたらいいのではと思ってしまいますが、そこに「妻や母の思いやりがある」と田中さんは言います。

昨今は、夫の帰宅が遅い家庭や、塾通いなどで子どもが遅く帰ってくる家庭が多く見られ、家族の食事時間に間に合わないこともしばしばです。おかずを冷蔵庫に入れておけばいいのですが、それではなんとも味気ないですよね。食卓に並んでいる方がおいしそうに思えますし、子どもの食欲も刺激できるでしょう。そうした妻の思いやり、母の思いやりに食卓カバーが一役買っている、というわけです。

また、海外では依然としてハエの多い地域がありますから、日本から移住する人や長く滞在する人も、食卓カバーを買っていくのだそうです。ワールドワイドな活躍も見せているのですね。

現在、国内では一社しか食卓カバーを製造していないことに驚いた人も多いでしょう。タナカ株式会社では懐かしい花柄など複数の柄の食卓カバーを販売しています。この機会にぜひ手に取ってみてはいかがですか?

取材協力:タナカ株式会社

(中田ボンベ@dcp)
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ライター

中田ボンベ@dcp

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