ヒトメボ

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ときどき無性に食べたくなるのは、慣れ親しんだローカルチェーン店のとあるメニュー。そんな人、多いのでは? よその人にはピンとこなくても地元民なら100%知っている、そうしたソウルフードとローカルチェーン店を特集。今回取り上げるのは、「ソースカツ丼」の「敦賀ヨーロッパ軒」。地域に根ざした伝統の味とお店について地元出身者のコメントも交えつつご紹介します。

市内に5店舗ある敦賀ヨーロッパ軒

ヨーロッパ軒は、大正13年(1924年)から続く老舗洋食店で、福井県内に19店舗あります。人口約26.4万人の福井市に本店を含む11店舗、坂井市に2店舗、鯖江市に1店舗、そして昭和14年(1939年)にのれん分けされた「敦賀ヨーロッパ軒」が、人口約6.6万人の敦賀市に5店舗をかまえています。

福井県民、とりわけ福井市民と敦賀市民は「ヨーロッパ軒のカツ丼で育った」といっても(おそらく)過言ではなく、ご当地では通称“パ軒” や“ヨーロッパ”と呼ばれ親しまれています。地元で交わされる「ヨーロッパいこか」は海外旅行のことではありません。

今回は、同じ「ヨーロッパ軒」でも独自のメニューや文化が色濃い「敦賀ヨーロッパ軒」に注目してみます!

ソースカツ丼は“とじない”

「東京で初めてカツ丼を頼んだとき蓋が閉じた丼が出てきて驚いた」

「カツ丼とはソースカツ丼のこと。卵でとじたりキャベツが敷いてあったりするのは邪道」

「敦賀ヨーロッパ軒」のソースカツ丼は、3枚のスライスしたロースのカツを、揚げたてのうちにウスターソースをベースにした秘伝のタレにくぐらせてから、タレをまぶしたご飯のうえにのせた丼。さまざまな工夫が凝らされているのに、見ためはとてもシンプル。そして、ごはんの量が普通盛りでも400g(大盛りは500gでカツ4枚)ととてもボリューミー!当たり前のことですが、福井県民はこれを「ソースカツ丼」とは呼びません。「カツ丼」です。

福井の味と敦賀の味

「福井人と敦賀人がいるところでパ軒の話題になるとあちらとは味が違うこちらのほうがウマイと言い合いになることがある。よその人には何を言っとるんか分からんと思う」

同じ「ヨーロッパ軒」の「カツ丼」なのになぜ? 実は、これには理由が。たとえば「福井と敦賀ではソースが違う」と、敦賀ヨーロッパ軒勤続35年の杉本芳実さん(以下、杉本さん)。福井ではイカリソースを使用していて工場でまとめて調合しており、敦賀ではカゴメソースを使用していて店内で調合。敦賀市は関西圏ということもあり、ソースはやや甘めに作られているそう。また、杉本さんいわく「カツも福井より敦賀のほうがぶ厚い」とのこと。

福井市民と敦賀市民、どちらにとっても慣れ親しんだソウルフードであるだけに他県民にとってわずかな違いでも敏感に気づくのかもしれませんね。ほかにも、メニューや店内の過ごし方においても敦賀ヨーロッパ軒ならではの特徴があるようです。

・「パリ丼」

「自分はパリ丼派。ミンチカツを噛んだときのジュワッとでる肉汁がおいしい。でも油断すると火傷する」

「子ども会の帰りなどで引率されてヨーロッパにいくとお金持ちやキザな子はパリ丼を食べていたような気がする」

パリ丼はカツの代わりにミンチカツ(メンチカツ)を乗せた敦賀ヨーロッパ軒発祥のメニュー。県外の人間でパリからメンチを想像できる人は少ないと思いますが、名前の由来について杉本さんにたずねたところ、敦賀ヨーロッパ軒の創業者である赤坂耕二さんが、「ヨーロッパへ視察旅行に行ったときに思いついた」からだそう。ロン丼ではなくパリ丼。パリパリした食感も分かっていい名前ですね。

・「スカロップ」

「カツ丼よりもスカロップ。頼むときは“デミ多め”で付け合わせのスパゲティやポテトサラダに絡めて食べるのが好き。でもスカロップってなに?」

大きなカツに特製のデミグラスソースがかかった敦賀ヨーロッパ軒限定メニュー。敦賀港もあることだし、根室のご当地料理「エスカロップ」となにか関係があるのでは? などファンの間でも憶測が飛び交っていますが、「由来は謎。創業者の赤坂しか知りません」(杉本さん)とのこと。

なお、独特な味わいのデミグラスソースのレシピを知るのは創業者の孫で現在の社長・赤坂敬造さんのみで、同じく創業者の孫である杉本さんですら教えてもらえないそう。さすが昭和14年創業! 重みが違います。

・「ジクセリ」(ピカタ)

「ジクセリとピカタというメニューが載っているが実は違いを分かってない。写真を見るかぎり同じ料理だけど……」

こちらも敦賀ヨーロッパ軒限定のメニュー。卵にくるまれたジューシーなロースのカツ。どことなくロシア(敦賀市はナホトカ市と姉妹都市でありロシアと関係が深い)を感じさせますが、このメニューについても名前の由来は分からないそうです。ですが、「ジクセリもピカタも同じです」(杉本さん)とのこと。同じ料理なのに名前を併記しているのは、ジクセリだけだとどんな料理かわからない人が多いからだそう。

さて、ユニークなメニュー群に後ろ髪をひかれながら、いざ今回の本題のソースカツ丼を実食。ここでも敦賀ヨーロッパ軒ならではの過ごし方があります。

敦賀ヨーロッパ軒での過ごし方

・やかんのお茶とロゴ入りの湯のみで和む

「席につくと母親がやかんで人数分のお茶を入れるのが我が家のルーティン」

デーンッと置かれたお茶が入った大きなやかんは、敦賀ヨーロッパ軒定番のテーブルセット。カツ丼を待つ間の、家族団らんを演出してくれる大事な舞台装置です。

・五木ひろしさんの写真を眺める

「どの店にも必ず五木ひろしのサインやポスターが飾ってある」

歌手の五木ひろしさんは福井県三方郡美浜町の出身。スターになる前からヨーロッパ軒に通っていたそうで、過去には店内で歌謡ショーを開催したこともあったとか。出身地に近い金山店には今でも毎年訪れているそうです。

・持ち帰り用のカツとソースを頼んでおく

「カツ丼を注文するときにあらかじめ持ち帰り用のカツとソースも頼んでおく」

持ち帰りの注文は初めに済ませておくとスムーズ。ちなみに、カツは1枚216円、ソースは1本432円で購入できます。基本的に汁物以外の全メニューが持ち帰りOK! 

・カツを蓋に移す

「カツを1枚だけ丼に残して、残りは蓋に移しておく。まずはソースが染みたごはんをひと口食べてからカツを食べる」

ここで先ほどの“閉じてない蓋”の出番。“カツを蓋に移して食べる”は、(おそらく)敦賀市民で知らぬ者はいないパ軒の知恵のひとつ。

・持ち帰る

「カツ丼は意外とボリュームがあるので、持って帰って夜ごはんにする」

食べきれない分はお店でもらえるフードパックに入れてお持ち帰りするのがスタンダード。自宅で食べる時間が経ったカツ丼も乙な味わいとのこと。また、お父さんやお母さん、祖父母が、留守番している家族へのお土産として、あらかじめ取り分けておいたりするそうです。持ち帰り用のカツとソースがあるのも、そうしたニーズがあるからなんですね。

“まごころとおいしさは北陸で2番”

敦賀ヨーロッパ軒といえば、“まごころとおいしさは北陸で2番”の奥ゆかしいキャッチコピーも印象的。どうして1番ではなく2番なのでしょう??

「1番はお母さんやおばあちゃんが作ってくれる料理です」(杉本さん)

帰省客で賑わうであろう年始にお店を休むのは、“お正月は実家の味を満喫して”というメッセージなのかもしれません。

敦賀市民と敦賀ヨーロッパ軒

ヨーロッパ軒は、まだ街にレストランなどがそう多くない時代から、ずっと市民に親しまれてきた洋食屋さん。特別な日に家族揃って出かけ、いつもよりもちょっとご馳走を食べたりする場でもありました。ちなみに、地元以外に進出しようとしたことはないのでしょうか?

「ヨーロッパ軒のカツ丼は福井の味。これまでよそからたくさんお誘いをいただきましたが、福井の味であり続けたいから県外には店を出しません。わざわざ足を運んで食べに来ていただけたら嬉しいですね」(杉本さん)

 今の時代のおふくろの味や故郷の伝統料理のような役割も果たしているであろう、ローカルチェーン店の名物メニュー。故郷は遠きにありて思うもの。今年も多くの元敦賀市民がカツ丼食べたさに帰省することでしょう。興味が湧いた人は福井県出身、敦賀市出身の人に聞いてみてくださいね。

*ヒトメボは、地元民なら100%知っているローカルチェーン店と名物メニューについて、皆さまからの情報をお待ちしております*

<取材協力>

敦賀ヨーロッパ軒本店

東京福井県人会

敦賀市在住、出身の皆さま

<撮影>

sono(bean)

(4番キャッチャーさかい)
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