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たった一言で慰謝料10万円!? 法律から見る昨今の「セクハラ」事情

恨みはまとめて晴らす!?

恨みはまとめて晴らす!?

2017年01月23日(月)  読了時間:約5分
 上司のセクハラに困っている人、すぐにセクハラと言われ何も発言できない人…。会社で頭を悩ませる「セクハラ」問題。セクシュアル・ハラスメント(sexual harassment=性的嫌がらせ)は、あってはならないことですが、厚生労働省等のHPによると平成24年度の都道府県労働局雇用均等室において取り扱った相談のうち、労働者からのセクハラに関する相談は約6000件にも及びます。また、人によってセクハラと感じるラインが異なるのもセクハラ問題の難しいところです。

 では、法的にはどのように判断されるのでしょう? 今回は昨今のセクハラ事情について、弁護士・佐藤大和さんにお聞きしました。


ボーダーラインは「平均的な感じ方」?


 まず、セクハラで多くの人が疑問に思うのは、法的なボーダーライン。お尻にタッチしてきたり、無理やり抱きついてきたりすれば、誰もが「セクハラ」と思うところですが、「最近太ったな」「今日はスカート短いね」などの発言だけでは、セクハラと感じる人もいればほとんど気にしない人もいます。では、セクハラの認定は「受け手がどう感じたか」によって決まるのでしょうか?

「厚生労働省の定義では、『平均的な女性・男性労働者の感じ方』をもとに、労働者が意に反する性的な言動に対して拒否等をしたことにより不利益を受けたり、意に反する性的な言動により労働者の社会的な職場環境が悪化し、業務に支障が生じたりすることをセクハラと呼んでいます。つまり、どんなに主張しても『セクハラにものすごく敏感な個人』の感じ方であれば、基本的に認定されない可能性が高いです」(佐藤さん)

 なるほど、確かに受け手の感覚だけで何もかもセクハラ認定されたらたまったものではありませんが、「平均的な女性・男性の感じ方」とはまた難しい。過去の判例で考えたときに、「発言」によるボーダーラインはどのあたりになるのでしょう。

「前述の例で言えば、『今日はスカート短いね』だけならファッションの指摘にすぎず、セクハラ認定は難しいと思います。一方、『最近太ったな』は性的な言動を匂わせる発言ですから、1回きりならまだしも、相手が嫌がっているのに繰り返し行えばセクハラ認定される可能性が高いです」(同)

 ただし、そうした判断は裁判官によって異なることもあるそう。佐藤弁護士によれば、「過去の判例では、女性に対し『男いらずの○○さん』という1回の発言でセクハラと認定され、少額ですが慰謝料額10万円の判決が出た例もあります」とのことです。


第三者の証言や被害の記録が有効


 一方、ボーダーどころか明らかにひどいセクハラを受けている場合でも、なかなか言うことができず、困っている人は少なくありません。セクハラに悩む人は、いったいどこに相談に行けばよいのでしょうか?

「男女雇用機会均等法で、会社にセクハラの相談窓口をつくることは義務付けられています。しかし、有名無実化しているケースが大半なので、会社が信用できなければ労働基準局や弁護士など、第三者機関に相談するとよいでしょう」(同)

 一般の人に弁護士は敷居が高いと感じてしまいがちですが、「当事務所を含め、大半の弁護士は相談だけなら無料です。気軽に声をかけていただいて構いません」とのこと。最近は佐藤弁護士の事務所にもセクハラの相談は増えているそうです。

 では、実際に訴えるとなった場合、相手が否定したらどうなるのでしょうか。証拠がない場合でも、セクハラ認定はされるのでしょうか?

「セクハラは密室で行われることが多く、確かに事実認定は難しいです。そのため、やはり第三者の証言をとることが大切になります」と佐藤弁護士。加害者の日頃の言動や上司部下の関係、他に被害者がいるなど、第三者を巻き込み証言をとることで認定もされやすくなるそうです。

「被害内容を日記やメモに書きとめておいたり、会話を録音しておくなどの証拠集めも有効です。また、セクハラが原因でもしうつ病などになったら、必ず診断書ももらっておきましょう」(同)

 ひどいセクハラであれば、損害賠償請求もできますし、嘘の噂を広めるなどの被害があれば名誉毀損でも訴えられるそう。

「悪質性の高いセクハラは、犯罪行為です。そうなれば、当然精神的な被害も大きく、慰謝料額も跳ね上がります。相手がお金を持っていなければ会社を訴えることもできますから、本当に困っているなら泣き寝入りする必要はありません」(同)


積年の恨みを辞めるときにまとめて晴らす!


 ただ、セクハラ問題で難しいのは、たとえ裁判で勝っても結局会社にいづらくなってしまうこと。そのため、相談者の数に対し、実際に訴える人の割合は非常に低いのだそうです。

「たとえ深刻なケースでも、相談で気を晴らしておしまいにする方が多く、まだまだ法的なサポートは十分でないと感じています。ただ、今はまだおおごとにしたくないという人も証拠だけは集めておき、いざ退職というときに訴える方法もあります」(同)

 なるほど、積年の恨みを辞めるときにまとめて晴らすというのは、確かにアリかもしれませんね。

 ちなみに、セクハラというと「加害者が男性上司、被害者が女性部下」の組み合わせが一番多いそうですが、被害者が男性であったり、同性同士のセクハラ事例もきちんとあるそうです。

「もちろん数は少ないですが、過去の判例では、女性上司が男性部下をホテルに誘い、セクハラと認定された例もあります」(同)

 いずれにしても、一番大切なことは法的にセクハラかどうかではなく、相手の気持ちを考え、不快と思うことはお互いにやらないこと。同じ職場で働く者同士、気持ちよく仕事できる環境をつくれたらいいですね。
(羊おとめ/サイドランチ)
識者紹介
佐藤大和
東京弁護士会所属。

三重大学人文学部卒業後、立命館大学法科大学院にて法律を学ぶ。弁護士を明確に目指し始めたのは、大学3年生の初め頃。ボランティアサークル部長としてのボランティア活動がきっかけ。弁護士としての信念は『「人の笑顔」と「つながり」を守ること』。親しみやすい人柄から、テレビやラジオ、雑誌などメディア出演でも人気を呼んでいる。

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