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2016.03.26
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2016.03.26
新生活スタートの時期。来年の社会人デビューを目指して頑張っている人や、新しい環境でバイトや仕事を探そうとしている人もいるのではないでしょうか。そんな就職、転職活動に欠かせない「履歴書」ですが、自分をアピールするために、ついつい内容を盛ってしまう……、なんてこともあるかもしれません。でも、もし嘘を書いてしまったら? 法律上、どのような問題があるのでしょうか?
履歴書に嘘の経歴を書いても、「詐欺」や「私文書偽造」といった罪に問われる可能性はあまりないでしょう。
詐欺罪とは、金銭等の財物をだまし取る犯罪のことです。たとえ履歴書に嘘の経歴を書いて提出したとしても、それによって即座に金銭等を受け取れるわけではなく、入社等の採用が決まるだけです。履歴書の提出によって財物をだまし取ったとはいえないので、詐欺罪にはなりません。
確かに、入社することによって給料を貰えるようにはなりますが、それは入社した後に「労働をしたから」であり、「履歴書を提出したから」ではありませんよね。嘘の履歴書を提出したことによって金銭を受け取ったわけではないので、「詐欺」とは言えないのです。
ただ過去に、求職のため他人の名義を無断で使用して履歴書を作った男性が、「私文書偽造」の罪に問われた事例があります。(H11/12/10東京地方裁判所) 私文書偽造罪とは「内容に嘘のある文書の作成を罰する罪」ではなく、「名義人(文書の主体)を偽った文書の作成を罰する罪」のこと。経歴をどんなに偽ったとしても罪にはなりませんが、自分自身の名前を偽ってしまうと、罪になってしまう可能性があります。
嘘の経歴を書いても「罪にはならない」とはいえ、会社から懲戒処分を受け解雇されたり、賠償請求をされる可能性はあります。
その「嘘」が本当に些細なことであれば、そういった処分まで認められることはないと思われますが、たとえば学歴・職歴・犯罪歴など、「真実を書いていれば採用しなかった」という重大な経歴詐称があれば、「懲戒解雇」は有効とされることが多いです。
また、もし経験者採用やキャリア採用などで虚偽の経歴を使って入社し、本来よりも多く給料をもらっているといった場合は、「不法行為」として、その分の損害賠償請求をされてしまうこともあるでしょう。
この場合も、履歴書と同じく「詐欺罪」にも「私文書偽造」にもならないでしょう。理由も同じで、オーディション通過そのものによって財物を得られるわけでもなく、名義を別の人物と偽ったことにもならないからです。
写真の加工は、肌の色を少し明るくする程度のことであれば一般的によく行われていることですので、もちろん犯罪にはなりませんし、損害賠償請求されるようなこともあまりないとは思います。
しかし、オーディションの参加規約で「加工禁止」とされていたり、極端に目を大きくしたり体型を大幅に修正するなど本人とかけ離れた見た目になっていれば、不正とみなされることはありえます。くれぐれも常識とルールを守って参加しましょう。
履歴書のような私文書の場合、多少の嘘を書いたとしても犯罪になる可能性は低いでしょう。とはいえ、どんなに小さな嘘でも信頼を落としかねませんし、もしかすると解雇や損害賠償請求をされてしまうこともあるかもしれません。ごまかすことなく、「あなた自身」の本当の魅力を伝えられる履歴書が作成できるといいですね。
(岩沙好幸 弁護士/アディーレ法律事務所)
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