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弁護士

鈴木淳也

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 恋はいろいろなきっかけで始まるもの。なかには嘘から始まる恋だってありますよね。映画やドラマには、好きではない相手とわけあって結婚したことから本当の愛が生まれる…なんていう展開も。とはいえ、そういった結婚に法律的な問題はないのでしょうか? 鈴木淳也弁護士(弁護士法人アディーレ法律事務所所属)にお聞きしました。

婚姻する意思がなければ偽装結婚になる!

「実際に夫婦として生活するつもりのない結婚であれば偽装結婚ということになりますね。

法律上、有効に婚姻をするためには、当事者の間で『婚姻をする意思』が必要とされています。『婚姻をする意思』が認められるためには、単に法律上夫婦として扱ってもらうつもりがあるというだけでは足りず、婚姻によって生じる同居や協力、扶助といった法律上の義務を負う意思が必要とされています。偽装結婚の場合、このような義務をともなう婚姻生活をする意思がないので、『当事者に婚姻をする意思がない』とされて婚姻は無効になります」(弁護士・鈴木さん)

 なるほど…無効になるんですね。とはいえ、「意思がない」というのは心の中の問題ですが、これって他人が判断できるものなんですか?

「確かに心の中の問題ですが、例えば婚姻後の生活実態などから判断することは可能です。婚姻後、理由もなく一度も同居していないような場合は、偽装が疑われます。他に判断のポイントとなる事実として、夫婦間で金銭のやり取りがあったり、出会いから婚姻にいたるまでの経緯が不自然だったりなどが挙げられます」(同)

 実際に夫婦として同居しているかなどの事実から、結婚する意思があったかどうかを判断されるということですね。偽装結婚は何かの罪になったりするのでしょうか?

5年以下の懲役を科されることも!

「偽装結婚は無効なので、偽装結婚の婚姻届を提出すると、『実際には結婚の事実がないのに、ウソの結婚を届け出ている』ということになりますね。これは、刑法157条1項後段の『電磁的公正証書原本不実記録罪』にあたる行為です。5年以下の懲役、または50万円以下の罰金刑が科されるとされています。電磁的と付くのは、現在、戸籍簿などは各役所にてコンピュータ化されているからです。公正証書原本不実記載の罪というのは、簡単に言えば、公務員に対して嘘の申し立てをして、間違った事実を戸籍簿等の公的な証明書に書かせる犯罪ですね」(同)

 なるほど…。ちなみに、一方に夫婦として生活する意思があっても、相手側にその意思がなかったら偽装結婚になってしまうのでしょうか。

「そうですね…相手にその意思がないことを知っていて婚姻届を出すような場合には、電磁的公正証書原本不実記録罪の『幇助』として処罰される可能性があります。また、たとえ当事者双方が他の目的のための手段として結婚する場合でも、当事者双方に同居などの義務を果たす意思さえあれば、結婚は有効ですし違法でもありません。裏を返せば、同居などの義務を果たす意思がなければ、どんな目的であっても偽装結婚となり犯罪となります」(同)

 結婚が偽装かどうかは、あくまで同居などの義務を果たす意思があるかどうかで決まるんですね。ただ、目的に関係なくというのは怖いですね。ちょっとした人助けのつもりで籍を入れたら、犯罪者になってしまう、なんてケースもありそうです…。ちなみに、偽装結婚の目的って実際にはどんなものがあるんでしょうか。

偽装結婚の目的は?

「目的は様々で、なかには脱税や詐欺といった犯罪が目的のものもあります。ですが、実際に問題となるケースのほとんどは、日本人と外国人の間で行われる在留資格取得が目的の偽装結婚です」(同)

 どうして法を犯してまで偽装結婚するのでしょうか?

「この在留資格は、一般に『配偶者ビザ』や『結婚ビザ』と呼ばれていますが、活動に制限がなく、また永住ビザへの変更も簡単だからです。これを防ぐため、国際結婚に伴う在留資格申請では、厳しい審査が行われ、場合によっては、実際に夫婦としての生活実態があるかを調べるために、自宅などでの私生活についてまで調査されることもあります」(同)

 どういった場合にそのような調査が行われるんでしょうか? すべての国際結婚には対応できないと思うのですが…。

「不法滞在中の外国人が、日本人の配偶者がいることを理由とした『在留特別許可』を申請する場合には配偶者と同居しているかの調査が入ります。この調査で同居していると認められないと許可を得にくくなります。また、いままで在留をしていなかった外国人が、日本人と結婚したことを理由に在留資格を申請する場合には、まれに抜き打ちで生活実態の調査が入ります。いずれの調査も、在留資格取得を目的とした偽装結婚を防ぐためのものといえます」(同)

 なるほど。犯罪目的でなければビクビクする必要もなさそうですが、ある日、自宅に調査員が…なんてことにならないよう、しっかりと愛を育んだうえで結婚したいものですね。

(森田公子/サイドランチ)
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ライター

森田公子

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