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弁護士

島田さくら

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 もし同性を好きになったら――。

 実は、同性愛者の人口は「左利きの人と同じくらい」と例えられることもあるほど多いのです。

 さて、異性同士の場合は「生涯ずっと一緒に暮らしたい」と思ったら、その先に「結婚」を考える人が多いと思いますが、同性同士の場合だとどうなるのでしょうか? 日本の法律ではどのように定められているのか、島田さくら弁護士(弁護士法人アディーレ法律事務所所属)にお聞きしました。

日本で同性結婚は認められる?

「世界的には、オランダやベルギー、スペイン、カナダをはじめ、年々同性結婚を認める国は増えています。アメリカでも各州で導入が進んでいますし、イギリスでも2013年に法案が成立しています。しかし日本において同性結婚は認められておらず、近々認められそうな動きもありません」(島田さくら弁護士)

 そう聞くと、日本は世界的に「同性愛者に対して厳しい国」という印象を持たれるかもしれませんが、そういうわけでもないよう。

養子縁組による同性結婚と同等の権利を得る現状

「先に述べた国や地域以外では、同性愛を違法としたり、宗教的に禁止していることも多いのに対し、日本では違法でもなんでもありません。そして、同性結婚は認められていないものの、養子縁組制度がそれに代替しているのです」(同)

 それはどういうことでしょう?

「日本のように婚姻制度のある国では、『家族にしか認めていない権利』があります。たとえば病院で家族の同意を求められることや、相続などもそうですね。そして日本の場合は、夫婦でも養子でも認められる権利はあまり変わりません。他国に比べて養子縁組を結ぶハードルも低いため、同性結婚の代わりにこの制度を利用する同性愛者が多いのです」(同)

 なるほど。一緒に暮らしたり結婚式を挙げるのはもちろん自由ですし、養子縁組を結べば法的な権利も夫婦と変わらないのであれば、それほど不自由はなさそう。でも、一生を添い遂げたいと思うパートナーが、戸籍に「親子」と記されるのはやはり嫌な人は多いはず。昨今の欧米の動向を見るに、日本でも同性婚を認めようという動きがあってもいいような気もしますが…?

同性結婚を認めるには憲法の改正が必要

「日本では、憲法第24条に『婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない』とあります。同性結婚を認めるにはこの憲法の条文を改正する必要があるのではないかと考えられているのです。民法を改正したり新しい法律を成立させることはそれほど難しくありませんが、憲法の改正となったらご存知のとおり大変です。

民法を改正するにしても、国内で議論が盛り上がれば話は違うでしょうが、前述のように日本では養子縁組制度で基本的な権利が代替できていることもあり、欧米諸国のように世論の盛り上がりがないのが現状です」(同)

 そうすると、日本では現状、同性同士の結婚は不可能ということになりますが、裏を返せば「異性同士」であれば誰でも結婚は可能ということ。もちろんこの場合も抵抗はあると思いますが、どちらかの戸籍上の性別を変えることで結婚はできるということでしょうか?

「性同一性障害者」であれば性別を変更できる

「日本では、平成15年に『性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律』が成立し、いくつかの要件を満たせば性別の変更が可能です。ただ、一点間違えないでほしいのは、この法律はあくまで『性同一性障害者』のための法律であって、『同性愛者』のための法律ではありません。ただ同性と結婚したいという人たちはこの法律でカバーされていないのです」(同)

 なるほど、確実に「性同一性障害者」である人だけに性別変更を認めるため設けられた要件ということなのでしょうね。あまり要件を緩くすると法律を悪用して性別変更をする人も出てくるかもしれませんし、なかなか難しいところですね。

 なお、「性同一性障害者」である場合、以下の6つの要件を満たし、裁判所に届け出て認められることが必要になるそう。

1.性同一性障害であることを証明する医師の診断書がある

2.20歳以上

3.結婚していない

4.未成年の子どもがいない

5.生殖腺がない

6.心に近いほうの性別に近い外観を備えている

 この要件を見ると、特に5,6などは本当に必要なのか、ハードルが高いのではないかという気もしないでもないですが、なぜこのような要件になっているのでしょう。

「確かに、まだ改正の余地があると思います。気持ちが女性であれば、5や6の要件は本当に必要なのかなと思いますよね。しかし、たとえば4の要件などは、当初は『子どもがない』でしたが、平成20年の改正で『未成年の子どもがいない』に緩和されていますし、今後も緩和されていく可能性は十分あると思います」(同)

ただ、仮にそうであっても、たとえば「心は男性、身体は女性、恋愛対象は男性」の場合だと、性同一性障害が認められ性別を男性に変更したとき、今度は好きな男性と法的に結婚ができなくなるという問題が生まれます。そうなるとやはり性別の変更というよりも、同性結婚そのものについてを考えていく必要があるのでしょうね。

 皆さんも一度は出会ったり、身近にいたり、あるいはまだ気づいていないだけで自分自身が同性愛者という人もいるかもしれません。純粋な恋愛関係にある同性カップルには、法律も柔軟に性別の垣根を越えてくれる社会であったらいいですね。

(羊おとめ/サイドランチ)
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