ヒトメボ

鳥類学者

藤巻裕蔵

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 よく、仲のいい夫婦のことを指して“おしどり夫婦”と言いますよね。本当のオシドリのつがいもさぞかし仲がいいのだろうと思いますが…、実際に見たことのある人ってきっと少ないはず。帯広畜産大学名誉教授であり「日本オシドリの会」会長の鳥類学者・藤巻裕蔵さんに、オシドリについてのお話を伺いました。

オシドリは1年ごとにパートナーを代える!

「オシドリは古くから絵画に描かれたり、山形、鳥取、長崎の3県で『県の鳥』に指定されているなど、日本各地で多くの人々に親しまれています。おもに日本北部で繁殖し、関東地方以西で越冬しますが、繁殖の状況や越冬期における生息状況などについては、まだ十分明らかにされているわけではありません。このため、はっきりとは言えないのですが、オシドリの夫婦は1年ごとにパートナーを代えて繁殖しています」(藤巻さん)

 なんと!

「具体的にいいますと、1月から2月にかけてつがいを形成しはじめ、だいたい3月までに大部分がつがいになります。そして4~6月に産卵し、産卵が終わると、メスが卵を抱き始め約30日後に雛が孵ります。ところが、オスは自分の羽毛が生えかわる6月の初めごろにはメスの側を離れ、そして翌年の1月を迎えると、オスメスともに別のパートナーとつがいになり、春になってまた繁殖を行うのです」(同)

 オシドリには半年足らずしか夫婦関係がなく、しかも1年ごとにパートナーを取っ替え引っ替えするんですね。“おしどり夫婦”の由来として有名な中国の故事「鴛鴦の契り」でもそうですが、実際のオシドリの生態は仲のいい夫婦の例えとしてはむしろ不適切のような…。そこでなぜ“オシドリ”だったんでしょうか?

“つがい”だと分かりやすかった?

「オシドリは、オスの色のほうが派手で際立っていて、メスはそれに比べて地味な色味です。ほかの鳥よりも見た目が異なるため一緒に居るとより目立ち、それで“仲がいい”という印象に映るのでは。ちなみにオシドリのオスは50円切手の絵柄になっています」(同)

 たしかにコントラストが強い…。こんなカップル、ときどき見かけます。でも、仲がいい(ように見える)のは間違いないでしょうけど、定期的にパートナーを変えたり、育児をメスに任せっきりにしたりと、実際のオシドリの夫婦は今の人間界で理想的とされる夫婦像とはかけ離れているようです。

 そこで藤巻さんに質問! 鳥類界でオシドリよりも“おしどり夫婦”と呼ぶに相応しい夫婦仲の鳥はいますか?

「タンチョウや白鳥は、一度つがいになると1年中一緒に居ますね。雛を育てるときも、オスがメスの側にずっとついています。そういう意味で考えると、オシドリよりも夫婦仲がいいといえるかもしれません。タンチョウにおいては、オシドリと違ってオスもメスも卵を抱くんですよ。人間界でいうところの“イクメン”ですね。シマフクロウもパートナーが死なない限りは、一生涯つがいを変えません」(同)

 まさしく“おしどり夫婦”です! 鳥も種類によって夫婦のカタチがいろいろあるんですね。そこは人間界と共通しているところかも。

 ルックスのいいオシドリのオスのような男性も魅力的ですが、結婚したら“タンチョウ夫婦”や“シマフクロウ夫婦”となって、いつまでも仲睦まじくありたいものです。

※鴛鴦の契り

鴛鴦(えんおう)とはオシドリのこと。春秋時代、暴君である康王によって悲劇の生涯を送った宋の韓憑(かんぴょう)と妻の何氏(かし)。後に夫婦の墓に生えた梓の木の上で、一対のオシドリが寄り添い日夜悲しげに鳴き続けたことから、この鳥は二人の生まれ変わりだとされたそうです。

(坂井あやの/verb)
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ライター

坂井あやの

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