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「五感プロデュース研究所」主席研究員

荒木行彦

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 ある特定の対象を前にしたとき「理由はないけど嫌い」と感じることがありますよね。いわゆる「生理的にムリ」。女性同士の会話ではしばしば登場する言葉ですが、実のところ男性はイマイチこの感覚にピンとこないのだそう。いったい、女性の言う「生理的にムリ」ってなんのこと? 「五感プロデュース研究所」主席研究員の荒木行彦さんに分析していただきました。

基準は、その人の子どもが産めるか!?

「『生理的にムリ』とは、『その人の子どもが産めるか?』という基準のもと、女性が男性を見るときにのみ発生する感情と言っていいでしょう。言葉の通り生理ですから、つまりは『自分の子宮に合わない、自分の子孫を残すのにはこの人では不安』と感じる感覚のことです。男性には子宮がなく子どもが産めませんから、この感覚にピンと来ないのも当然。生理的に合わないと感じるのは、人(=ホモサピエンス)の動物的感覚が女性にそう判断させているということなのです」(荒木さん)

 なるほど。そういえば筆者の友人も、「生理的にムリ」と感じた男性について「あの人とキスしたり、それ以上のことをするなんて想像できない」とも言っていました…。これってつまり、「セックスしたくない(=子どもを残したくない)」ということですよね。

 ところで、こうした感情を抱くのにはきっかけがあるはず。具体的に女性は男性のどんなところで「この人との子孫を残すのは不安」と感じるものなのでしょうか?

正体のひとつはニオイ(HLA遺伝子)

「特に関係が深いのは、ニオイです。人の体臭には『HLA遺伝子』という情報が含まれており、男女間ではHLA遺伝子の似ていない者同士が性交渉をしたほうが、免疫能力が高く丈夫な子孫が残せるとされています。女性は子どもを産んで育てるという役目がありますから、より強い子孫を残すために、男性とのHLA遺伝子の相性を嗅覚で嗅ぎ分けるのです。このとき、汗臭いと思ってしまうのが生理的にムリな相手で、心地よいと感じるのが相性のいい男性ということです」(同)

 傍からは「ちょっとないな…」という体臭の持ち主の男性でも、「このニオイが好き!」なんていう彼女がいたりしますもんね。それって実はベストカップルなのかも。

嗅覚以外のポイント

「また、ニオイに限らず『生理的にムリ』の感情が湧き起こるポイントは人それぞれ。ある人は、男性の毛深い腕を見て第一印象で『この人には抱かれたくない』と感じるかもしれないし、別の人は、食事中のクチャクチャという咀嚼音を不快に感じ『この唇にキスされるのは勘弁…』と思うかもしれません。また、食後に爪楊枝で歯をツーとする姿など、何気ない仕草や振る舞いを見て男性に幻滅する人もいるでしょう。女性は、視覚や聴覚や嗅覚といった五感のそれぞれを使って、その男性と何かが合わないことを察知するのです」(同)

 主因はニオイとは言いつつも、五感がどう反応するかは個性のようなもの。だからこそ、女性の数だけ「生理的にムリ」の要因があるとも言えそう。

 それにしても、男性にとって女性に「生理的にムリ」と言われることほど傷つくものはないはず…。一方の女性も、いっときの恋人候補ならともかく職場の仲間など今後も顔を合わせる人に対し「生理的にムリ」と感じてしまったとき、その印象を持ったまま付き合っていくのってけっこう大変。この厄介な感覚にはどう向き合えばいいのでしょう?

近年は「生理的にムリ」の感覚が鈍くなっている女性も

「『生理的にムリ』と言われた男性の現実は、厳しいものかもしれません。ただし、女性に思いやりや優しさのある一面を感じさせられれば、印象が改善されることはあると思います。女性の中には、五感の力が弱まり、『生理的にムリ』の感覚が鈍くなっている人もいます。男女のコミュニケーションの主な場がネット上になると、言葉で愛を伝えたり、手をつないで温もりを確かめあったりするチャンスがどんどん減っていきます。こうなると五感を鍛えられず、見た目だけを頼りにして相手を選んだ結果、失敗する人も多いのです。いわゆる『恋愛音痴』な人のことですね。そして、思い描いた理想の男性とズレていたら、何でもかんでも『私あの人のこと生理的に嫌い』という言葉で片付けてしまいます。これは本来の意味とは異なりますから、女性をエスコートし包容力をアピールすれば、きっと惚れなおしてもらえるはず。もちろん、身体も清潔にして口臭も気にしないとダメですけれどね。

そして女性も、『この人嫌だ』と意識し過ぎないこと。実際にその人の子どもを産むわけではないのですから、仕事上の付き合いと割り切るのが一番です。それよりも、五感を磨いて『生理的に合う』パートナーを見つけられるよう努力していきましょう」(同)

 うーん、奥が深い。「生理的にムリ」の感覚は、相性のいい相手を見極めるために備わった、ある意味とても重要な本能だったということですね…! モヤモヤの正体が分かって、ちょっとスッキリしました。

(池田香織/verb)
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ライター

池田香織

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