ヒトメボ

コラムニスト

菊池美佳子

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 脚フェチ、胸フェチ、筋肉フェチ…。世間にはさまざまな「○○フェチ」が存在しますが、いまだに「『○○好き』とどう違うのかよく分からない…」なんて人も多いはず。そこで、改めて現代におけるフェチの定義について、フェティシズム研究家でコラムニストの菊池美佳子さんに解説して頂きました。

フェチとはある対象物に過度のこだわりがあること

 はじめに、1887年に心理学者のアルフレッド・ビネーが発表した論文だと、肌着や靴など、本来は性的な対象でないものに性的魅力を感じることをフェティシズムとしているそうですが、これってつまり、「胸フェチ」や「お尻フェチ」は間違いということでしょうか?

「『胸やお尻など、元々性的対象である部位はフェチの定義には入らない』というアルフレッド・ビネーの説ももっともですが、現代日本においてのフェチは、『その対象物に対して過度のこだわりがある』という解釈でよいのではないでしょうか。たとえば、大好きな女の子の机の上に置いてあった体操着の匂いを嗅ぐ…という行為はいかにもフェチという印象が強いですが、そのほかにもニーハイソックスの『絶対領域』に興奮したり、白いシャツからうっすら下着が透けて見えることに喜びを感じる人も多いでしょう。また、男性のワキの香りが好きという女性も結構います。さらには、使用後のアイロン台のぬくもりを擬人化して萌えたり、壁や黒板に過度な興奮を覚える人もいます。このように、フェチの対象となるものの範囲は非常に広いのです」(菊池さん)

 アイロン台に黒版まで! もはや何に性的な魅力を感じるのか分かりません。もしかしたら胸やお尻も本来とは別の意味で愛でている可能性も…。では、「〇〇好き」とはどこが違うのでしょう?

フェチはほかに置き換えられない

「フェチとは、『こういう胸じゃなきゃだめ』『こういうお尻じゃなきゃだめ』という、他のものでは代用できない強いこだわりがあるケースのことを言います。『○○好き』は、例えば『巨乳好きだけど、微乳でもまぁいっか』と、他のものに置き換えられる感情です。『〇〇好き』ではなく『〇〇フェチ』と表現することで、より強いこだわりがあることを周囲に印象づけるでしょう」(同)

 たしかに、強いこだわりを印象づけたいから自ら「○○フェチ」を公言することってある気がします。

フェチという語を用いるメリット

「フェチという言葉にはメリットも存在します。最近は、一般女性のブログやSNSのプロフィールでも『お料理フェチ』や『ジョギングフェチ』といった自己紹介を見かけるようになりました。性的なフェチとは少し意味が変わりますが、『お料理好き』と表現するよりも『お料理フェチ』のほうが、こだわりが感じられますよね。その上、どこかエロチックな印象も与えられるので、この言葉のマジックを利用しているのかもしれません。例えば、男性が、『釣りマニア』と言うより『釣りフェチ』と表現すると、ユーモアのある印象を受けますよね」(同)

 言葉にどこか危なげなニュアンスが漂いますが、だからこそ使いようによってポジティブな印象になるのかもしれませんね。ところで、ある特定のものに対する強いこだわりっていつ生まれるのでしょう?

フェチになるには「きっかけ」がある

「なんとなくフェチになることもありますが、多くの場合は何らかのきっかけがあってフェチになります。例えば、同棲を始めたばかりのカップルで、彼女が脱衣カゴに放り込んでいた下着をたまたま手にとってしまったことで、使用済み下着のフェチになったという男性がいます。その女性と別れてからもそのフェチは続いていると言いますから、これは過去の恋愛が少なからず影響を与えた例と言っていいでしょう」(同)

 これぞまさに「新たな扉を開いてしまった」瞬間ですね。そうした瞬間がいつ自分に訪れるのか、楽しみなような、不安なような…。

 それにしても、フェチの世界って改めて奥が深い! みなさんにも、これだけは譲れないという「〇〇フェチ」はありますか?

(池田香織/verb)
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ライター

池田香織

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