ヒトメボ

サブカル系歴史作家

堀江宏樹

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読了時間:約3分

 いつの時代にも存在した「女性の嫉妬心」! 彼女の嫉妬深さに悩む男性はもちろん、女性自身だって、ときには自分の嫉妬深さに自己嫌悪に陥ってしまいますよね。そんな男と女を悩ませる女の嫉妬ですが、過去の偉人たちはどんな嫉妬の中で生きてきたのでしょうか。

 女の嫉妬シリーズ、第1弾は「なぜ七福神は紅一点?」。七福神として存在している七人いる神様のうち、なぜ一人だけが女性なのか。実はそこには嫉妬との深い関係がありました。今回は、『乙女の美術史』(実業之日本社)などでおなじみの歴史作家、堀江宏樹先生に神話の世界から嫉妬にまつわるお話をご紹介いただきます。

 七福神といえば、年賀状のイラストなどにもよく登場する縁起の良さそうな7人の神様。そのなかにいる一人の女性が、弁財天と呼ばれている神様です。弁財天は芸術の神様として有名ですが、彼女が祀られている上野の不忍池でカップルがボートをこぐと嫉妬されて別れる、なんて都市伝説もある通り、一部では嫉妬深い神様としても知られています。そんな弁財天が七福神の紅一点……一体なぜ彼女なのでしょう。

「これはあくまで七福神にまつわる一説にすぎませんが、もともと七福神の紅一点は、弁財天ではなかったんですよ。最初は、『吉祥天』という女神がいたのですが、弁財天がそれを追い出してしまったんです。吉祥天は、七福神のなかでたった一人のイケメン枠、『毘沙門天』の奥さんだった。しかし、後からきた弁財天は、毘沙門天を気に入り、急接近したのです。嫉妬深い弁財天からしてみれば、吉祥天は七福神の一人であり、自分の好きな男とも一緒にいるわけですから、黙ってはいられません」(堀江先生)

 後から来たにもかかわらず嫉妬した弁財天。嫉妬の炎の矛先である吉祥天はどうしたのですか?

「懐の深い吉祥天は『しかたないわね、弁天ちゃん。彼も七福神の席もゆずるわ』と、七福神の席ごと弁天様に明け渡してしまったのです。単なる一説とはいえ、地位も夫も全てゆずってしまうなんて、なんだか昼ドラのような展開ですよね」(同)

 えっ。吉祥天、優しすぎません? そして弁財天はいくらなんでもわがままじゃないですか?

「吉祥天は寛容で優しく、どこまでも許してくれる懐の深い神様だと言われています。一方、弁財天は、意志が強くて、積極的なイメージのある神様。吉祥天は鎌倉時代まで貴族の間で広く信仰されていましたが、時代が移るにつれて人気をなくし、弁財天にその座をとってかわられます。それが室町~戦国時代くらいまでのお話。そして、弁財天を含んだ、現在に到るまでのメンバーによるユニット「七福神」への信仰は、江戸時代以降に大ブレイクしていくのでした。このころの民衆に求められたのは、吉祥天のような優しい女性よりも、弁財天のようなよくも悪くも意志の強い女性像だったのかもしれませんね」(同)

 嫉妬する弁財天にあっさりゆずる吉祥天。強くてわがままな女性と、懐深く優しい女性の組み合わせは、まさに昼ドラや少女マンガでよく見かける対比のよう。作品内では慎み深く堪え忍んだ主人公が勝つパターンが主流ですが、歴史を紐解くと、嫉妬深い強欲な女性が勝利を収める、ということもあったようです。なんだかこの一説を知ると、黙って譲るばかりが得策ではないのかも……なんて思ってしまいました。

(小野田弥恵/プレスラボ)
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ライター

小野田弥恵

プレスラボ

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