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2015.09.07
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「私たち婚約しました!」というスターの幸せ会見や、「お前とは婚約破棄だ!」というドラマでよく見かける修羅場など、婚約って、言葉自体はすごく世間に浸透していますよね。筆者も「実は婚約者がいるんです」なんてセリフ、一度は言ってみたいものです。
…ですが、そもそも、「婚約」ってなんなのでしょう? なにをどうしたら「婚約」なの? 結婚の一歩手前の関係だとは分かっていても、きちんと説明できる人は少ないのではないでしょうか。そこで、アディーレ法律事務所の島田さくら弁護士に伺いました。そもそも婚約ってなんですか?
「婚約とは字のごとく、『婚姻の約束』であり一種の契約です。契約と同時に、そのカップルには『結婚を成立させるために誠意をもって努める義務』が生じます」(島田さん)
でも、結婚を成立させるための約束って、はたして必要なんでしょうか…。わざわざ婚約というステップを踏まなくても、結婚する気があるならすぐにでも入籍してしまえばいいのでは?
「もちろん、婚約は必ずしも必要なわけではなく、その期間を設けずに入籍するカップルもいます。ただ、両家の挨拶や結婚式の準備に時間がかかったりもしますし、職場への説明や新居を探すときにも『婚約者』というほうが説明はしやすいでしょうね」(同)
なるほど。では、どうすれば婚約したことになるの?
「実は、結婚や離婚に関する法律はあるものの、婚約に関する法律は存在しません。そのため、何をしたら婚約で、婚約したらどんな義務や権利が生じるかは、一概に決まりがないのです。ただし、ご存じのように個人間の『契約』に関する法律は存在します。例えば会社との労働契約や、お金の貸し借りなどもよくある契約のひとつですよね。婚約も契約の一種であり、基本的には当事者同士の合意があれば、口約束でも成立するものとされています」(同)
えっ…! 口約束でも契約が成立するということは、その場の雰囲気で「結婚しようね」「そうだねぇ」なんて会話を交わしただけでも、婚約したことになるってこと?
「そうですね(契約が成立します)。ただし、前提として当事者同士が『誠心誠意をもって将来夫婦になろうと思って約束している』ことが必須となります。例えば、浮気している人が『妻とは別れて君と結婚するよ』と囁いたところで、現実的ではないですよね。つまり、明らかに達成できないことを約束しても、その契約は効力を持たないのです。また、結納や指輪の交換といった儀式は、婚約成立の客観的事実にもなります。これらは必ず行わなければならないわけではありませんが、慣例上、結婚の意思があるとみられる行為であり、二人の誠心誠意をより公に証明するものと考えられます。こうした客観的事実があるかないかということが、万が一、婚約破棄となったときに重視されます」(同)
ふむふむ。では、その“万が一”が起こったらどうなるの?
「先ほども述べたように、婚約とは婚姻を約束する契約であり、もし不当な理由で一方的に契約を破棄したり、遂行しなかった場合は、損害賠償責任が発生します。しかしそれは、婚約関係にあったと認められる場合に限ってのこと。結納や指輪など客観的事実の効力がここで発揮されるということですね。ちなみに、婚約破棄をした(された)場合に発生する損害賠償責任は、次の2種類に分けられます」(同)
結納費用(両家顔合わせの会食費、指輪や記念品の購入費)、結婚に備えて購入したが無駄になってしまったものなど
精神的ダメージに対して発生する賠償金(婚約破棄の慰謝料は数万~数十万円が相場)
「婚約破棄の理由はカップルによって様々ですが、損害賠償責任が生じるポイントは『不当な理由で一方的に』婚約を破棄した(された)かどうか。正当な理由と不当な理由には、それぞれ次のような例があります」(同)
「『相手に浮気をされた』ことは婚約破棄の正当な理由になります。しかし、婚約破棄まで至らずに、『浮気されたことに対する慰謝料』だけを求めることができるかどうかについては、争いのあるところです。婚約期間中は結婚に向けて努力する義務が生じますが、そこに『貞操義務』が含まれるかどうか、裁判所の判断が固まっていないからです(結婚している場合は貞操義務があるので、浮気の慰謝料は発生します)。『婚約者に浮気されたことが原因で婚約破棄になった』場合に、慰謝料請求が可能だというのが現状です」(同)
結婚と婚約はとても近い存在でありながらも、法的には大きな差があるんですね。では、次のようなケースはどうなるのでしょうか?
A:理論上はできる
「結婚と違い婚姻届などを提出するわけではないので、しようと思えばできます。ただし、結婚に向けて努力する約束を複数の相手と結ぶという行為は、それ自体、誠実なものといえません。ちなみに同性カップルが婚約をしていて婚約を破棄された場合に慰謝料等を請求できるかというと、難しいでしょう。今の日本の法律では同性婚ができないので、そもそも達成不可能な契約は無効となるからです」(同)
A:できる
「基本的には双方の同意があれば成立するので、未成年でも婚約は可能。しかし、20歳未満は親の承認がないと結婚できないため、本人同士に婚約の意思があっても取り消されることがあります」(同)
A:それが原因で婚約破棄になれば、損害賠償請求も
「相手に婚約者がいると明らかに分かっているのに、その人を積極的に誘ったり、2人の邪魔をして婚約破棄に追い込むようなことをした場合、損害賠償請求をされる可能性があります」(同)
意外と知らなかった、婚約のアレコレ。彼や彼女と結婚を考えている人は、まずは婚約の意味から勉強してみるのもいいかもしれませんね。
(池田香織/verb)初出 2014/3/5
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